協会は5月16日、京都府に要請書「新型コロナウイルス感染症対策についての真摯な中間総括とさらなる感染拡大に備える方策の具体化を求める」を提出し、京都府議会各会派にも要請書を届けました。
今回の要請は第6波(2021年12月21日~22年3月31日)において375人、第5波の7倍とされる死亡者数が記録され、うち60歳以上が360人(96%)を占める実情(4月28日付京都新聞報道)を受け、府の新興感染症対策の最重要課題はいかに死亡者を発生させないかであるとの立場から行ったものです。
この要請に先立ち、協会は独自に病院および施設を対象にアンケート調査を実施。高齢者や障害のある人たちが入所する社会福祉施設では陽性となった方が入院できず、施設療養を求められ死亡するという、あってはならない事例が多数確認されました。このアンケート結果は、5月14日付で京都新聞が「新型コロナ第6波 急変、入院できず死亡15人」として大きく報じました。20日には朝日も報道しています。
調査結果を受けて、協会は京都府に対し、「必要な医療につなぐことができていれば回避することができた可能性がある死は、すべて政策による死であり、高齢者はハイリスクであるという基本を無視した結果」と厳しく指摘し、要請しています。
コロナ「第6波」における影響調査
協会は新型コロナウイルス感染症「第6波」で感染した高齢者等が施設に留め置かれた問題について、協会はコロナ患者受入病院と高齢者・障害者施設に対し影響調査を4月13日から25日にかけて実施しました。
3割が確保病床数超え受入
コロナ患者受入病院について、病床使用率ピーク時の50病院を対象にファクスで実施し、33病院(66%)から回答がありました。厚生労働省の公表資料によると、京都府は50病院813床を確保病床とし、京都府はそれと異なる904床(110床の入院待機ステーションを繰入、妊婦等配慮を要する専用病床20床を除く)としており、使用率の分母となります。
33病院のうち、確保病床数を超えて患者を受け入れた病院が9病院(27%)あり、患者数は少なくとものべ199人にのぼりました。確保病床数では明らかに足りない状況であったことがうかがえます。多いところで「11日77人」「26日49人」を受け入れていました。また、搬送時に心肺停止状態だった例は7病院で22人にのぼりました。
京都府に望むことについては、「必要な人を確実に入院できるよう振り分けること」48%、「高齢者施設入所中の方にも医療を保障できる体制整備」36%、「入院待機ステーションのフル稼働」「正確なデータの公表」が27%であった。「その他」記述では、▽補助金(機器整備費)の充実▽財政支援の強化▽入院公費請求に対して迅速な対応を望む▽訪問診療の充実、などでした。
施設の半数以上で利用者が感染
施設については府内の特別養護老人ホーム(160)、老人保健施設(69)、障害者支援施設(49)の合計278施設に送付し、120施設が回答(43%)。
施設内での感染について、「利用者に出た」65施設(54%)、「スタッフに出た」85施設(71%)で、「出なかった」は20施設(17%)であり、利用者・職員双方に出たのは50施設(42%)となりました。感染者の実数は利用者948人、スタッフ631人となります。
感染した利用者がいる65施設のうち、「施設内で治療(往診等)」は37施設(57%)、「入院して治療」は36施設(55%)ですが、前者は703人、後者は148人と施設内治療者が大きく上回りました。
急変し入院できずに死亡した例も
施設内で治療や経過観察の方の症状が急変した方がいたのは、20施設53人。このうち「入院できた」のは14人にとどまり、「入院できず死亡」が15人、「入院できなかった」9人、「そもそも救急車を出せないと言われた」が2人で、記載なし13人。入院できずに死亡した例が最も多い施設は7人、次いで4人のいずれも特養。救急車を出せないと言われたのは2例とも京都市の施設でした。
当該施設の意見欄には、入院できず死亡者を出してしまったことへの申し訳ない気持ちとともに、「施設での陽性者ケアは不可能」「陽性者は入院させてほしい」との悲痛な訴えや、施設内での感染の広がりを抑えるためにも「検査結果を早く知らせてほしい」など意見が多数綴られています。