協会は、核燃料サイクル事業に固執する国の方針に反対し、声明を1月12日付で発出。安倍晋三内閣総理大臣、世耕弘成経済産業省大臣、山本公一環境省大臣に送りました。以下、声明全文を掲載します。
もんじゅ廃炉の現実を受け止め、直ちに原発からの脱却を強く求める
政府は昨年12月21日、高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉にし、より実用炉に近い「高速実証炉」の開発に着手する方針を決めた。発電に使った以上の核燃料を生み出す「夢の原子炉」と言われたもんじゅは国民の税金を一兆円も投じながら、稼働日数はわずか250日。しかし、政府は使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」事業は続ける方針だ。
「もんじゅ」の廃炉については、遅きに失したとはいえ、その判断をまずは歓迎したい。しかしながら、政府は将来の高速炉開発に必要だとして、もんじゅを活用した研究を実施する方針も示した。また、フランスが開発中の高速炉「ASTRID」に協力し、知見を得るという。政府はもんじゅ廃炉が物語っている核燃料サイクルの破たん、そして放射性廃棄物処理問題に目を背け、世界のエネルギー潮流から取り残され、なお利権にまみれた原発推進の姿勢を崩さず、高速炉開発を押し進めようとしている。国民の多くが原発再稼働に異議を唱える現状で、看板を掛け替えただけの新型原子炉開発に、納得できるはずもない。
高速増殖炉では今のところ冷却材にナトリウムを使用する以外にない。金属ナトリウムは水と反応し、高温では空気中で燃えるほど反応性に富む。また、少しでも不純物が含まれると強い腐食性を持つ。さらには炉心のナトリウムが沸騰すると原子炉が暴走・爆発する危険性がある。このように技術的にも安全性が確立できない炉が核燃料サイクルの中核に位置付けられているのである。
そしてなにより、原発は徹頭徹尾、他者に犠牲を押しつけるものである。平常運転時の労働でも下請け・孫請け労働者が被曝を強いられている。発電所や核燃料サイクル施設は、決して都会には作ることができず、過疎地に押しつけられている。私たち京都府保険医協会の脱原発を求める主張の根源には、この問題がある。
私たちは、政府に対し、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉という現実を真摯に受け止め、核燃料サイクルおよび原発再稼働を断念するよう強く要請する。そして、すべての人たちの生命を守るという政治の原点に立ち戻り、エネルギー政策を見直すよう強く求める。
2017年1月12日 京都府保険医協会 理事長 垣田 さち子