2020年1月以来の新型コロナウイルス感染症拡大によって、高齢者をはじめ重症化リスクの高い人たちが中等症以上であっても入院できず、亡くなる事態が多数発生しました。批判の矛先は開業医に向かい、メディア等でも「コロナ患者とかかりつけ医」に関し多くの報道がなされました。国はこうした動きを活用し、かかりつけ医「制度」創設の機運を盛り上げようとしています。
これを受け、協会は6月14日、かかりつけ医の「制度」ではなく、「機能」を発揮できる医療制度の在り方を求める提言をとりまとめ、関係各所に送付しました。
「かかりつけ医」提案が各所から
提言は、地域の医療者は積極的に公衆衛生に参加すべきと考え、その意味からはかかりつけ医「機能」が重要だとの認識は共有できると述べています。一方、「制度」化の必要性は認めないと強調しました。
続いて、かかりつけ医「制度」化をめぐる、立憲民主党、日本プライマリ・ケア連合学会理事長、財政制度等審議会建議の三つの提案や問題提起を紹介。その上で、新型コロナの流行拡大は医学教育・医師養成課程、地域医療実践に対し、いくつもの改善点を示唆したと指摘しました。具体的には、①全ての医師が感染症対応にあたることのできる基本的診療能力形成の必要性と、そのための初期研修制度からの研修内容の改善や充実の重要性②地域の医療者が行政や多職種と連携し「グループ診療」の実践へ大きく踏み出すことの必要性③感染症、集中治療などの専門医の確保と質向上、社会医学系専門医の育成と配置の必要性―等であり、これらは国際標準でもあります。
地域の医師のかかりつけ医「機能」を強化すべきとの意見がそうした観点からのものであるとすれば、協会も賛同すると述べています。
機能発揮できる医療制度の在り方を
しかし、国がかかりつけ医「制度」創設をねらう動機は従来からの医療費抑制を主眼とした医療制度構造改革の一環であり、国の悲願である「家庭医構想」によるフリーアクセス、自由開業、療養の給付原則の破棄を目指すものです。協会は、かかりつけ医「制度」創設に向けた外来機能報告制度や紹介状なし定額負担の拡大に続き、次に国が手がけるのは「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担」である可能性が高いと指摘。協会は、かかりつけ医「機能」が発揮される医療制度の在り方こそが求められているとして提言しました。
提言全文は下記からご覧いただけます。