2017年度の特徴と課題(協会年度=6月~翌年5月まで)
■紛争件数は前年度と同件数(41件)となり、今後の動向が注視される。
■事故報告数の病診比率は、病院:診療所≒2:3となり37年振りに診療所が病院を上回った。
■全事故報告中、過去最高の97.5%【2344/2405】が既に解決している。なお、前年度解決率=96.9%であった。
■複数回の医事紛争を報告する医療機関は、2医療機関が最多で3件/年、4医療機関が2件/年であった。これは前年度より若干、減少傾向となった。
■医療事故調は勤務医・開業医とも深刻な事態を招きかねず、その動向が注視されていたが、現時点で大きな問題とはなっていない。
■ 引き続き医療法に基づく医療安全対策の確実な実施が肝要である。
報告件数
2017年度の大きな特徴としては、1981年度以来、診療所の件数が病院を上回ったことであろう。全体的な件数については、1990年代後半からの単調増加、2000年代半ばからの単調減少といった、いわば分かり易い状況は終わりを告げ、過去5年間は絶対数は比較的小さいが、年度毎によって減少や増加を繰り返し、近い将来の予測も困難な様子が窺えた。しかしながら、過去に医療崩壊と言われたような深刻な状況は脱したと判断して良いだろう。医事紛争は過去のデータから推測すると、ある年度から急増する傾向が認められるので、比較的紛争が少ない間に、会員各位には医療安全体制を一層万全にして頂くように啓発していきたい。1970年代から2000年代までは、ほぼ10年毎にその様相を激変させてきたが、最近の医事紛争傾向は上記の通り予想し難い傾向にあり、分析・評価も難しくなってきた面もある。何れにせよ、第二次医療崩壊は絶対阻止しなければならないと考える。
紛争原因別
2014年度以降、「管理」(13件)が3年連続で最多であった。しかし、2017年度になって初めて「注射」(12件)が最多となり、「管理」(8件)、誤診(5件)と続いた。例年多くを占めていた「手術」は4件で極めて少なかったと言えよう。2017年度は、採血等に伴う医療事故が急激に増加したが、その原因は不明である。しかし、今後も注射に関するトラブルは一定程度発生すると予想されるので、引き続き会員医療機関に対して、トラブル発生時の患者対応等を含めた注意喚起が必要である。また、2017年度は件数こそ減少したものの「管理」についても、今後の高齢化社会を考慮すると、引き続き医療安全対策において、重要な位置を占めることが予想されるので、協会として高齢患者対策(特に転倒・転落)も一層の強化が必要である。
医師別
内科医が19件で最多となり、次いで「外科医」、「整形外科医」と続く流れは例年通りの傾向である。2016年度、一旦減少傾向を見せた「施設」については、2017年度4件と増加した。また、逆に2016年度、内科医に続いて多かった整形外科医は8件から4件へと半減した。その他には、数年ぶりに「皮膚科」、「精神科医」の医療事故が報告された。内科医の件数が依然突出しているが、来年度もその傾向は維持されると推定される。