現在、65歳以上の高齢者に対するワクチン接種事業が進められており、6月下旬ごろからは64歳以下の一般住民への接種が開始されます。また、このワクチン接種は日本国民だけでなく、日本に在住する在日外国人も対象です。しかし、在日外国人の場合、言葉の壁があり、ワクチンの有効性や安全性等、わかりやすい情報の提供が課題となっています。こうした問題意識を持つ、京都民医連中央病院(右京)に勤務するファム・グウェン・クィー医師らが在日ベトナム人に対するコロナワクチン接種に関する緊急アンケートを実施。以下、そのアンケート結果をご紹介します。
9割超が接種希望も6割が無料「知らない」
駐日ベトナム大使館をはじめ、全国20以上の在日ベトナム人コミュニティに協力いただき、2062人から回答を得ました。回答者の多くが20歳代で技能実習生、高度人材の労働者、留学生です。その調査結果から、「予防接種を受けたい」が93・5%にのぼる一方、「無料で接種できることを知っているか」では59・9%、実数では1236人が知らないと答えています。
情報入手が困難、経済的負担への心配も
また、「自宅へ郵送される案内が読めない」「(日本語が話せないため)接種のための予約ができない」、加えて副反応自体への心配、副反応が出た場合の仕事への影響や通院・入院などの経済的負担も多くの人たちが心配と答えています。こうした結果は、在日ベトナム人に限ったことではなく、その他の在日外国人にも共通する問題です。
多言語対応は必須
予防接種に関する希望では、7割以上の在日ベトナム人が、「予防接種の便利な場所と複数の時間帯」「予防接種に関するベトナム語の案内・説明資料と現地の通訳」「ベトナム語で相談できるホットライン・窓口の設置」と回答しています。また、希望するホットラインツールはフェイスブックメッセンジャーが最多の74%という結果です。
対応求め京都府保険医協会が国などに要請
クィー医師は「これまでの日常診療の中で、外国人患者については言語による壁が高いと感じている」「第1波から3波までの間に、受診の流れなどが変化していたが、その情報が十分に行き渡らず混乱を引き起こし、在日ベトナム人から多くの相談が寄せられた」としています。
京都府保険医協会はクィー医師の協力を得て、このアンケート結果をもとに、4月9日に国と京都市をはじめとする府内市町村に、4月14日に京都府に要請を行いました。
在日外国人の問題は京都府に限ったことではありません。国による支援が必要不可欠です。また、京都府には府内の先導の役割を求めて要請を行いました。もちろん、住民接種の実施主体である市町村にも要請しています。
要請項目は、▽ワクチン接種券配布時には対象者に多言語化した説明書の一律添付を▽在日外国人のための集団接種会場の設置を▽各言語に日本語表記を併記した予診票の作成を▽技能実習生などが勤務する企業への訪問接種の検討を▽多言語対応のホットライン、窓口の設置を▽情報の拡散は支援団体の協力確保やSNSの活用を―の6項目です。