協会は3月16日、厚生労働省に対して「2022年度改定において初・再診料などの引き上げを求める要望」書提出行動を実施した。厚生労働省は保険局医療課の吉井主査、中嶋係が対応。協会は鈴木理事長、福山副理事長、吉河・種田・植田理事、関顧問が参加した。なお、今回の要望書提出にあたり、参院厚労委員の倉林明子議員(日本共産党)に仲介をお願いした。
・2022年度医科診療報酬改定において初・再診料などの引き上げを求める要望書
・2022年度改定に向けて初・再診料等を引き上げるためのアンケート結果
・機能強化型・連携型の在宅療養支援診療所の施設基準に定められた月1回のカンファレンスについて、ビデオ通話等を用いた場合を認めることを求める要望書
協会の要望は、①感染防止対策の評価として、初・再診料、外来診療料、小児科外来診療料等を10~30点引き上げること。少なくとも乳幼児感染予防対策加算100点を10月以降も100点で算定可能とし、22年4月以降も算定可能とすること、また、医科外来等感染症対策実施加算5点、入院感染症対策実施加算10点を10月以降も算定可能とし、22年4月以降も算定可能とすること、②医師の「基本的な診察や処置等」の費用を評価するため、①とは別に初・再診料、外来診療料、小児科外来診療料等を10~30点引き上げること、③外来における調剤技術基本料14点を大幅に引き上げること、④処方料の加算として一包化加算を新設すること、⑤機能強化型・連携型の在宅療養支援診療所の施設基準に定められた月1回の連携体制を構築する医療機関間のカンファレンスについて、ビデオ通話等のICTを活用した場合も認めるよう、通知又は事務連絡すること-の5点。
①②については、福山副理事長から協会が昨年末に実施した「初・再診料に関するアンケート」結果に基づき要求していることを説明。 21年4月の薬価の引き下げで4,300億円、医療費ベースで1%程度の引き下げとなるため、この分は診療報酬本体に戻すよう強く要求した。また、中医協資料によれば外来では20年度比で9割程度の件数で推移しており、特に小児科、耳鼻咽喉は多くの月で8割を下回っていることを指摘。少なくとも臨時的取扱いで導入された加算を恒常的な取扱いとすべきだと要望した。
これに対して厚労省は「入院・入院外の加点について、年度後半の取扱いは新型コロナウイルス感染症の発生状況等を踏まえて、年度前半の対応を単純延長することも踏まえて検討する。22年度診療報酬改定の議論はこれからとなるが、感染症の状況や、年度後半の特例対応をどうするかも含めて、今後検討していきたい」と回答した。協会から、初・再診料を1点上げるだけでも財政的影響が大きいことは分かっているが、厚生労働省には頑張っていただきたいと再度要望した。
医療機関の薬剤師の技術料評価 一包化加算の新設強く求める
③については、吉河理事から20年の改定で6点引き上げられたが、依然として調剤報酬の調剤基本料、調剤料との格差が大きすぎることを指摘。少なくとも調剤技術基本料だけで薬剤師が雇える位の報酬を設定してほしいと要望した。
これに対して厚労省は「医療機関の調剤業務については、診療報酬全体の議論の中で必要な対応を検討していただきたいと考えている。薬局には初・再診料の基本料がなく、調剤基本料のみで体制整備に係る経費を評価しているので比較は難しいが、必要な対応を検討できたらと考えている」と回答した。
④については、吉河理事から自院での一包化に関する経費を報告。機材料だけでも月約7万円必要になっており、機材料だけでも補填してもらいたい。服薬管理のため他院の処方分まで当院で改めて一包化する場合もあると訴えた。
これに対して厚労省は「医薬分業を進める中で、薬局がない地域もあるので、釣り合いをどうしていくか今後検討しなければならない」と回答した。
これに対して協会から「地域包括支援加算では原則として院内処方を行うことが算定要件。従来医薬分業が推進されてきたが、近年このような条件の改定が行われていることを踏まえると、医薬分業の矛盾点、弊害も考えられているのではないか。院内処方された薬剤を処方した医師が責任を持って管理することも意味がある」「従来の医薬分業とは違う流れを厚生労働省が認めて、かかりつけ医の評価として進めていることは間違いない。その流れの中で、地域包括支援加算を算定している場合は多剤投与も認められている。当然一包化という大きな手間に対して一定の評価すべき」と指摘すると、厚労省側も一瞬回答に窮した後、「ご指摘の地域包括支援加算等の取扱いとの整合性も含めて、今後の診療報酬改定の議論の中で検討させていただきたい」と回答した。協会からは「厚労省には、全医療機関に対して、一度実態を調査していただきたい」と要請、厚労省は「ご意見を踏まえ、今後どういう調査ができるのか考えさせていただきたい」と回答した。
強化型・連携型支援診のカンファレンス 電子通信機器等でも可能
⑤について厚労省は「コロナ禍の状況も鑑み、医療機関の実情に応じて、個別の問い合わせに応じて、電子通信機器等を用いた媒体的な手段でも可能だと返答している」と回答した。協会からは「周知徹底のため事務連絡を発出してもらいたい」と要請、厚労省は「対応ができるか検討したい」と回答した。
最後に、協会が2月5日に実施した「重症度、医療・看護必要度をはじめとした経過措置の再延長等を求める緊急要望」に対して中医協で議論され、3月10日に再延長が事務連絡されたことに対して感謝を述べた。厚労省からは「現場の診療を頑張っている医療機関の方々のサポートになるような取組ができればと考えている。引き続きご意見等いただきたい」との返答があった。
同要望書は首相、財務相、厚労省三役、中医協会長及び委員、衆参厚労委員にも送付して改善を要請した。