来年は診療報酬・介護報酬の同時改定です。介護報酬改定については社会保障審議会・介護給付費分科会で議論が進んでいます。給付費分科会は2018年1月~2月の諮問・答申に向け、12月中旬には報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめをめざしています。
今次改定は同時改定であり、医療・介護総合確保推進法(2015年国会成立)に基づく今後の医療・介護サービス提供体制政策に主眼を置いたものとなります。この間、介護報酬にかかわっての2つのことを紹介します。
1つ目は、介護事業経営実態調査です。
毎回の介護報酬改定にあたって実施されている「介護事業経営実態調査」の結果が10月27日に報告されました。
調査は2017年5月に実施。介護保険サービスを行う3万1944施設・事業所を対象に2016年度決算の状況などを尋ね、47.2%に当たる1万5062施設・事業所から回答を得ました。
調査結果は、2018年度介護報酬改定の基礎資料となります。厚労省は当初、10月初旬に結果を発表する予定でしたが、衆院解散を受けて、先送りしていました。
調査結果によると介護保険サービス事業所全体の2016年度決算の平均利益率(収支差率)は3.3%で、前回調査の2013年度の7.8%から大幅に低下。概況調査を行った2015年度の3.8%からも0.5ポイント減少。2015年度改定で、2.27%の大幅マイナスだったことと、人手不足で人件費が膨らんだことが主な要因と分析されています。
介護サービスの収入に対する給与の割合は64.3%で、前回よりも上昇。サービス別に見ると、最も利益率が高かったのが、「通所リハビリテーション」「小規模多機能型居宅介護」「認知症対応型共同生活介護」の5.1%。最も低かったのが「居宅介護支援」のマイナス1.4%でした。
厚生労働省 第24回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000182533.html
非常に厳しい経営実態ですが、分科会ではマイナス改定を求める支払側と提供側が対立しています。
2つめは、そんな中、国から提案されたのが「生活援助」についての新たな提案でした。
第149回社会保障審議会介護給付費分科会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000183153.html
国は歴史的に訪問介護のうちの生活援助を低く評価してきました。何度となく、給付から外してしまえといわんばかりの議論もありました。
今回出されたのは、現在の訪問介護員の要件である150時間の研修を求めない「研修を修了した者」が担うこととしてはどうか、という話です。
しかし、生活援助こそが専門性の基礎だというのが、多くの現場福祉職の声です。たとえば調理をしながらも、専門性に基づく観察・判断・情報収集をする。これが福祉職の専門性の基礎だということです。
国は「自立を阻んでいる」と生活援助を攻撃し続けています。しかし、社会保障制度としての介護保障を論ずるならケアが必要な高齢者の「自立」とは何か。本当はそれこそが論じられるべき議論であるはずです。