協会も参加する「子ども医療京都ネット」は、京都市に「子ども医療費無料化を早急に求める要請書」を4月14日の日付で提出しました。
府内では京都市だけが通院200円の対象が2歳まで(3歳以上は月1500円)という遅れた水準のままとなっています。2月の京都市長選のおりには、市民の願いを反映して争点の一つとして立候補者3人のうち2人が中学卒業までの無料化を訴え、現職候補の門川氏も「誰ひとり取り残さない SDGsを推進」するとして「助成をさらに拡充」と発言していました。要請は、「子育て環境日本一」を謳う京都市として、一刻も早く府内最低レベルを脱するよう、独自の上乗せにより所得制限なしで義務教育までの医療費を通院も無料に拡充することを求めています。
なお、提出にあたって当局と懇談を行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染防止の観点から要請書の送付のみとなりました。
京都市さん、通院の3歳から1500円負担ってどうなん?
講演会 すべての子どもが平等に医療にかかれるように
12月1日(日)14:00~16:00
職員会館かもがわ(中京区土手町夷川上ル末丸町284)
※会場アクセス
- 講演「貧困と子ども医療―誰ひとりとりのこさないために」武内 一氏(佛教大学教授)
- フロアからの報告
- まとめの報告 尾藤廣喜弁護士
参加費無料、申し込み不要
多くの方のご参加をお待ちしています
子ども医療ネットの運動で前進 府制度の通院1500円に
京都府が子育て支援医療助成制度について、3歳〜15歳における通院の月3000円負担を、9月から1500円に軽減することを1月25日に発表した。同制度のあり方を検討してきた府の会議が12月27日の第3回目に方針を打ち出したことを受けた市町村との調整を経ての結論で、2月議会に提案される。なお、新たに所得制限を設けることや高校生まで年齢を拡大することは見送られた。
なお低水準の京都市
府内26市町村のうち15歳までの年齢で3000円負担を課しているのは、京都市が3歳から、亀岡市が小学生から、向日市・長岡京市・舞鶴市・大山崎町が中学生からの6自治体のみ。他はすでに独自の上乗せで負担なしが4自治体、200円負担が15自治体、福知山市が日500円負担となっている。すでに亀岡市が10月から200円負担にすることを表明しており、府と同時に発表した京都市の新制度注は3歳から月1500円負担の現物給付となる。府制度(図)はほぼ4年ごとに前進してきたが、3歳からの通院は07年から3000円負担のまま据え置かれてきた。
特にこの低年齢層の要望が強いことに加えて、18年度から国が自治体の助成に課してきたペナルティを就学前に限って廃止したことを背景に、保険医協会などでつくる「子ども医療費無料制度を国と自治体に求める京都ネットワーク( 子ども医療京都ネット)」が17年8月から運動を再開。京都市内の子育て世帯を調査し、負担による受診抑制の実態があるとした結果は京都新聞で大きく取り上げられ、さらに京都府・京都市それぞれに4千筆を超える署名を提出。4月の府知事選で候補者双方が公約に掲げるまでになり、今回の拡充につながった。
就学前の無料化は喫緊の課題!!
この結果を受けて「子ども医療京都ネット」は、「府の拡充を歓迎するも無料化に向け一層の努力を」と求める声明を1月25日に発表。前進はしたものの、府内の子どもの半数を抱える京都市で依然1500円もの負担があり、特に手厚い助成が必要な就学前の負担としては近畿全府県で最も高いままにおかれることを指摘。西脇知事の唱える「子育て環境日本一」にふさわしい制度とするためには、京都府、京都市ともにもう一段の努力が必要だと求めた。
京都府の“3000円負担は重すぎる”
貧困層を医療から遠ざける負担をゼロに
子ども医療ネット講演会で和田医師
子ども医療費助成について、京都府の3歳以上通院月3000円負担は重すぎるという声を受けて、府は検討会で拡充に向けた検討を行っている。そんな中、子どもの貧困と医療費を考えるため、協会などでつくる「子ども医療京都ネット」は「反貧困ネットワーク京都」と共催で12月2日、講演会をこどもみらい館で開催。50人が参加した。長野県の健和会病院院長の和田浩氏(日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」代表世話人)が講演し、それを受けて尾藤廣喜弁護士と和田氏の対談を行った。和田氏は、長野県の無料化運動について、償還払い(1件500円負担)の制度でも受診できない子どもがいることを実例で訴えて中学生までの現物給付化を実現したと紹介。京都府の3000円負担は、それ以上にハードルが高く、「普通ではない」ことを発信すれば、多くの共感を呼ぶはずだと話した。
困難を抱えた人とどう向き合うか
小児科医療の現場での貧困のあらわれについて、「定期通院に来ない場合に『貧困があるのでは』と考える必要がある」と言われ、はじめて自分の患者(事例①)にも思い当たるようになったと語った。ただし、困難を抱えた親は、貧乏だけど健気な親子というイメージを抱いていると、そうでない人たちの方が多いので裏切られることが多い。「助けて」と言えない、コミュニケーションが苦手で、外見や態度が受け入れがたいなど、「援助したい気持ちになりにくい人」である場合が多いと率直に語った。そういう人たちが「助けて」と言えるには、「自分は助けられるに値する、生きるに値する人間である」という自己肯定感と、他人や社会に対する最低限の信頼感という二つの条件が必要(雨宮処凛氏)。貧困は、たやすくこの二つを人から奪ってしまうため、適切な援助が必要だとした。
軽症でも時間外に受診する「コンビニ受診」を生むなどを理由に、無料化反対の声がある。これまでは裏付けるデータがほとんどなかったが、群馬県が中学卒業まで無料化した以降の時間外受診患者数は減っているというデータなどがあることを示した。また、自己負担がないから不要な医療が行われるとしたら、問題ではあるが、経済的ハードルでそれを抑制しようとすると、貧困層だけを医療から遠ざけることになる。さまざまなデータや実例を示して共通認識を広げていくことによって、反対論者とも一致点を築いていけるとした。問われる自治体の姿 対談で尾藤弁護士は、日本は諸外国に比べ無償の医療は市民の権利だという意識が薄く、自己責任が強調される。自己負担の弊害が貧困層に偏っているのは国際的には常識となっており、子ども医療費の無料化は必要であり、生命と暮らしを担う自治体のあるべき姿が問われるとした。
さらに、各分野からの報告で、兵庫県明石市が中学生までの医療費完全無料をはじめとした施策の充実により、子育て世代の転入と税収増につながっているという視察報告がされた。
子どもの未受診・治療中断18%も 助成制度の改善求める署名に協力を
子ども医療費要請署名はこちらから
子どもの健康とくらしアンケート結果詳細版はこちらから
協会などでつくる「子ども医療京都ネット」は、子どもの貧困問題が深刻化している中で、子育て世帯のおかれた情況を把握し、制度改善につなげるため実施した「子どもの健康とくらしアンケート」結果を発表しました。京都市を中心に保育園、小児科医療機関の協力で1218通を回収しました。
子どもの医療費や薬代の負担感について49%が「ある」とし、未受診または治療中断をした経験については、18%(224人)が「ある」と答えました。必要な治療を受けられない子どもが2割近くもいるというのは、決して見逃すことができない状況です。「ある」と答えた224人の方に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「時間がない」「仕事が休めない」と並んで「お金がない」も23%ありました。
3000円負担の無料化を希望する人は94%にのぼりました。その対象年齢については、「18歳まで」29%、「中学卒業まで」41%、「小学校卒業まで」24%。「就学前まで」でよいという回答はわずか7%でした。
子どもの医療に関する悩みや困りごとなどをきいたところ、「3歳になって急に負担が上がった」「転居してきて京都市の負担の高さに驚いた」「予防接種が高すぎる」といった記載が多く寄せられ、「経済的に不安」「ためらう」「がまんさせる」という記載も少なくありません。「全ての子どもが貧富の差なく医療にかかれるように」「子どもに優しい都市」になってほしいとの願いが込められた記載もみられました。
子ども医療京都ネットは、京都市における通院が就学前においても月上限3000円と、近畿のどの地域よりも高負担であることを特に問題視。京都府、京都市に制度改善を求める要請署名を集めています。ぜひご協力ください。
無料化求め再始動! 子ども医療京都ネット
子ども医療費無料制度を国と自治体に求める京都ネットワーク(略称:子ども医療京都ネット)が、2017年8月31日にReStart代表者会議を開き、13年ぶりに活動を再開しました。
■略歴
▼2001年5月31日、「乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」(略称:乳幼児医療全国ネット)が運動を開始したことを受けて、同年9月27日に「乳幼児医療費無料制度を国と自治体に求める京都ネットワーク」(略称:乳幼児医療京都ネット)を結成。国への署名とともに府内自治体への署名をはじめ賛同を広げ、府民に地域格差の存在と制度の必要性を知らせ、行政・議会においてもその必要性を一定浸透させることができました。それにより、不十分ながらも就学前までの拡大を勝ち取り、さらに上乗せを行う自治体が続々と出てきたことから、2004年12月の事務局会議をもってネット活動をいったん区切りとしました。
▼今回活動を再開するのは、子どもの貧困が深刻化し、国による自治体助成へのペナルティが就学前までの助成に限って廃止された情況にありながらも、依然改善されない制度改善を促すことを目的とします。特に就学前の子どもは受診抑制するようなことがあってはならない大事な時期であるので、京都府と京都市には強く求めていきたい。2017年8月31日に再開の代表者会議を開き、再開にあたっては名称を標記のように改めました。
■要求
子ども医療費無料制度を国と自治体に求めながら、当面は①中学生までの3000円負担をなくし無料化求める②学童う歯対策を府全域に拡大③子ども医療助成への国保減額調整(ペナルティ)の全廃―を求めます。
■事務局団体
京都府保険医協会/京都府歯科保険医協会/新日本婦人の会京都府本部/京都民主医療機関連合会/京都社会保障推進協議会/京都保育団体連絡会
■事務局
京都府保険医協会
京都市中京区烏丸通蛸薬師上ル七観音町637 インターワンプレイス烏丸6階
〒604-8162 TEL 075-212-8877 FAX 075-212-0707
■子どもの医療費助成制度を巡る状況
①全国の助成状況
厚労省が7月7日に公表した「乳幼児に係る医療費の援助についての調査結果」(2016年4月1日現在)によると、全1741市区町村のうち通院費を「高校卒業まで」助成している自治体は378(前年比+109)で全体の22%、「中学卒業まで」は1005(+9)で58%、「小学校卒業まで」は121(-27)の7%と着実に拡充。「中学卒業」までは通院80%、入院90%の自治体で実施している状況があります。自己負担なしの自治体は6割を超える1054に及んでいます。なお、国で中学卒業まで無料化する影響額は7100億円(2012年度予算ベースの粗試算)とされています。
②ペナルティの廃止
自治体が独自に窓口負担軽減を行うことに対し、国は「医療費の増加につながる」として市町村国保の減額調整というペナルティを課しています。子育て支援の実情にそぐわないなどと自治体の反発もあり、国は2018年度より就学前の支援に限ってペナルティ廃止を決めています。そもそも自治体が住民のために実施する窓口負担軽減にペナルティを課すこと自体が問題で、全ての福祉医療においてペナルティ廃止が求められます。
なお、京都府の自治体における就学前までの廃止の影響額は1億円弱、就学後も含めた総額は15億円(2015年度分)で府は2016年11月に国へ廃止要望を行っています。
③京都府の変遷と現況
京都府の助成制度(右表)を、通院についてみると、乳幼児ネットの運動もあり2003年に就学前まで達成したときは、月8000円超額を償還払いとするものでした。その後、金額は3000円にまで引き下げられ、中学卒業まで拡大はしましたが、依然3歳以上で高い負担額となっています。
受診抑制という観点から大事な時期である就学前までの負担額で比較すると、近畿の府県では突出していることがわかります(別表参照)。
なお、府の2015年度助成費用は17億5981万円で、中学卒業まで無料化する場合の追加費用は27億円と試算されています。
④府内市町村の現況
2017年度に拡充した市町村は、4月に実施した南丹市、京丹後市、井手町、9月実施の宇治市と亀岡市、久御山町。京丹後市と井手町が新たに行ったことで、「高校卒業まで」入院通院ともに対象とする自治体は5となりました(久御山町は入院のみ)。また、完全無料としている自治体は4です。
一方で通院月3000円の負担を課しているのは、京都市が3歳以上、亀岡市が小学生以上、向日市・長岡京市・大山崎町・舞鶴市が中学生のみ。9月から宇治市はこの部分を200円負担に、亀岡市は3人以上子どもがいる世帯に限って200円負担としました。
京都市で就学前の子どもの受診に月3000円を必要とするのは、府内でも他の政令市との比較でも突出していると言わざるをえません(別表参照)。同市は2016年12月公表の「京都市貧困家庭の子ども・青少年対策に関する実施計画(骨子)案」で「更なる拡充の検討、恒久的な補助制度創設の要望」に言及していますが、早急な改善が必要です。
⑤歯科の無料制度
京都市は歯科受診に関しては、小学生は無料となる「京都市学童う歯対策事業」という優れた制度があります。しかし、その前段階の年齢で3000円負担により治療をためらうことになれば、早期治療の観点から問題であるし、治療にかかる助成費もかさむことになり、この点からも拡充が望まれます。
舞鶴市・宮津市・伊根町でも助成が行われており、子育て医療費とともに全府に広げてほしい制度です。