何度も経過を報告してきた、「京都府地域医療構想」策定の動き。地域医療構想は、医療・介護総合確保推進法に基づき、医療法上の医療計画に盛り込むことが義務づけられた「法定計画」です。
このほど、京都府はこれを「京都府地域包括ケア構想」としてついにとりまとめました。協会は既に、京都府が2016年12月に示した「中間案」に対し、パブリックコメントを提出していました。
パブリックコメントでは、次のことを指摘しました。
・京都府が、国の「地域医療構想策定ガイドライン」の定める「医療需要に対する医療供給を踏まえた病床の必要量(必要病床数)の推計」を機械的に採用しないように努力したことを評価する。
・一方、国は「病床数」にのみ着目して構想を立てさせているため、地域ごとの診療科の不足や医師の不足はまったく反映されない。医療福祉関係者・市町村と協同して、京都府はその解決にあたってほしい。
・また、ビジョンは2025年の在宅医療等の必要量の推計(国推計)を全域で1.8倍と見込んでいるが、こちらは病床削減・効率化、平均在院日数短縮という国の方針を反映した計算式を用いたものであり、府はあくまで、入院・在宅両面の保障をめざす立場で医療政策を進めてほしい。
これに対し、今回、正式にとりまとめられたビジョンは、中間案に比べ、「薬局」に関する記載追加などがある一方、焦点となってきた各構想区域の必要病床数推計について、16 年5月1日現在の許可病床数に比べて減らさず、全体として増加する見込みを明記し、なおかつ、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の各需要別の病床数の「目標」を細かく書き込みませんでした。この点は率直に評価できるものでしょう。
一方、パブリックコメントの結果も報告されています。16年12月19日~17年1月16日の間に56人、129件の意見が寄せられました。
協会と同様、府が国の方針を機械的に採用しなかった姿勢を評価する意見が複数ある一方、機能別必要病床数が記載されていないため「必要となる経費や人員数がイメージできず、将来も引き続き医療資源が偏在することが危惧される」と逆の指摘もありました。
パブリックコメントで目につくのは、「在宅療養」あるいは「地域包括ケアシステム」についての意見です。
「入院治療が必要な患者が病院を追われることにならないか」「地域包括ケアシステムの推進は重要」「慢性的な人手不足」「市町村の役割を強化することが必要」…etc、今後ふくらむであろう在宅医療の需要をどう受け止めるのかについて、それぞれの考えが書き込まれています。
協会はあらためて在宅療養の受け皿をどう確保するかについて、府に対する要望をとりまとめたいと考えているところです。
加えて、パブリックコメントには「新専門医制度」に関する意見も寄せられていました。
意見は「都道府県間の格差是正」という考え方自体が問題だと指摘し、新専門医制度で京都府の基本領域における専門医数が制限されるのではないかとの危惧を表明するものでした。これに対し、府は「新たな専門医制度における診療科別地域別に定数を設けることについては、反対」と明記しました。
地域医療構想の策定は、国にとって、自治体にとって、そして医療者にとって、それぞれの立場からの「医療提供体制改革のスタート地点」になります。
今後、府はより具体的に地域課題を抽出し、その対策を打ち出していく「保健医療計画」を策定することになります。京都府が、入院・在宅の両面から確実な医療保障を目指す姿勢が求められており、協会も必要な意見を届けていこうと考えています。