去る2月7日、介護保険法改正案が閣議決定され、国会へ法案提出されました。
法案名は「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」です。
法案のポイントは下記URLからご覧いただけます!
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-06.pdf
法案は、(1)地域包括ケアシステムの深化・推進と、(2)介護保険制度の持続可能性の確保の2つの柱で構成されています。
(1)のところで気になるのが、「介護医療院」の創設が打ち出されたことでしょう。
これは、「介護療養型医療施設」及び「医療療養病床のうち、医療法上の看護師及び准看護師の人員配置が4対1未満の病床」が、2017年度末に設置期限を迎える(経過措置が切れる)ことを受けて、登場してきたものです。
経過を振り返ると2006年の医療保険制度改革で、2011年に介護療養病床の廃止を決定。
老健施設等への転換促進が開始されました。しかし実際には療養病床の必要性を訴える声は少なくなく、転換も国の思うようには進まない中、2011年の介護保険法改正にあたり、廃止が2017年度末までと延期されていたものです。
この間、折しも「医療・介護総合確保推進法」が成立し、地域医療構想が登場。
療養病床を意識した慢性期医療の提供体制の見直し(在宅移行の推進)があらためて打ち出され、「療養病床への入院受療率の地域差」解消の観点が、必要病床数推計に盛り込まれたことで、一気に「新類型」の創設議論が進みました。
厚生労働省は2015年に療養病床の在り方等に関する検討会、2016年に療養病床の在り方等に関する特別部会を設置し、議論を進めてきました。
そうした議論を受けて登場したのが「介護医療院」であり、要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設、と説明されています。
法案の説明資料を読むと、「新たな介護保険施設の概要」は次のように整理されています。
●名称:介護医療院
※ただし、病院又は診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用することができる。
●機能:要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する
(介護保険法上の介護保険施設だが、医療法上は医療提供施設として法的に位置付ける)。
●開設主体:地方公共団体、医療法人、社会福祉法人などの非営利法人等
その上で、「現行の介護療養病床の経過措置期間については、6年間延長することができる」とされ、具体的な介護報酬・基準・転換支援策は、介護給付費分科会等で議論するとしています。
「介護保険法上の介護保険施設だが、医療法上は医療提供施設として法的に位置付ける」とは、医療施設なんだけど財源は介護保険からネ、ということでしょうか。
もともと、小泉医療制度構造改革のとき、都道府県の医療費適正化計画策定が法定化され、「療養病床数」を医療費抑制にかかわる目標値にあげさせたことからもわかるように、療養病床をどうするか? は、国のめざす効率的な(医療費抑制できる)提供体制の実現にとって、キーとなってきました。
そういう意味では、介護医療院も「医療から介護へ」の政策の流れにある発想なのでしょう。
検討会や特別部会では、委員から「私は介護療養病床を廃止して、新しい類型の議論をしなければいけないのがよくわからない」「介護療養病床のような手厚く人を配置した施設は、もうこの国ではぜいたく施設である。そこでしか生きていけないような虚弱なお年寄りを抱えて国は困っている。もっと安上がりの施設で我慢しろ、そこで死ね」ということなのか?「厚生労働省でも、あるいは委員のどなたでもよろしいのですが、なぜ廃止をしなければいけないのか教えてください」という根源的な疑問が呈される場面がありました(特別部会・第3回)。
地域包括ケアシステムの実現という掛け声の背景にある、医療や介護サービスにかかる費用の抑制策。
その正体を見据え、私たちは一つ一つの国の提案を吟味せねばならないでしょう。
法案では、さらに保険者機能強化策とあわせて、「地域共生社会」が強調されています。
「我が事、丸ごと」の地域福祉推進の理念を規定、と書かれています。
これはいったい何なのか、というと、下記のURLから、関連資料を見ていただけます。
「制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」が、彼らのいう「地域共生社会」だそうです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000150534.html
その実現のために、介護サービスに「共生型サービス事業所」を新設するといいます。
介護+障害の事業所が誕生することになるようです。
(2)は、一定以上所得者に対する利用料3割負担導入、介護納付金における総報酬制です。
財務省筋が求めてきた「軽度者」の「生活援助」の保険給付除外等は、今回の法案から外されました。
しかし、利用料負担の引き上げは、今後法案化が予定される医療保険改革での負担増もあわせて、高齢期の医療・介護保障の「負担」の在り方の根本問題として、医療団体の側からも意見表明が求められるところでしょう。