医師偏在解消と自由開業制・フリーアクセス制限
「医師偏在解消」を掲げ、医師の管理・統制を目指す動きが本格化してきました。
これは「新専門医制度」をめぐって医療界が大混乱に陥り、それに乗じるかのように表面化してきました。ですが、「自由開業規制」や「保険医定数制」(定年制も?)の導入は、何度となく国が打ち出し、その都度、医療関係者の反発で引っ込められてきた経緯があります。
その意味では歴史的な課題でもあり、国の医師管理・統制への執念を感じます。
国がどこまで、何をやるのか?細部まで明らかになっているわけではありません。
しかし、国は医師養成システムと地域医療構想や医療計画の両側面から検討しているようです。
社会保障審議会医療部会や医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会等で検討されており、来年の通常国会で「法案」として提出される見通しです。
〈医師養成システムの側面から〉
ⅰ 卒業後の地域定着がより見込まれるような地域枠の在り方を検討
ⅱ 初期臨床研修は医師不足に配慮して募集定員を設定
ⅲ 専門医(新専門医制度における)について都道府県の調整権限を強化し、診療領域ごとに枠を設定
〈地域医療構想・医療計画の側面から〉
ⅳ 医療計画に医師不足の診療科・地域等の医師数確保の目標値を設定
ⅴ 将来的に医師偏在がつづく場合、十分ある診療科の診療所の開設について、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討
ⅵ 特定地域・診療科での従事経験を、診療所等の管理者要件に
ⅶ 医師・診療行為情報のデータベース化
法案化がめざされているのは、医師管理・統制だけではありません。
京都保険医新聞で何度も取り上げ、会員の皆様に患者署名をお願いしているように、患者さんの負担増など様々な「改革」も準備されています。「難病等を除く全病床での居住費の患者負担化」「スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の在り方見直し(参照価格制)」「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入」、介護保険制度では「福祉用具貸与等の原則自己負担化」、「『軽度者』の生活援助の自己負担化」、「要介護1・2の通所介護の保険給付除外」…etc。
とりわけ「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担」は、患者さんの側からみれば、本格的なフリーアクセス制限の導入であり、医療者側からみれば、「かかりつけ医にならないと医業が成り立たない」状況を生み出すものでもあります。
自由開業制規制とフリーアクセス制限。
戦後、医師と患者さんが守り、育んできた国民皆保険制度の下での医師と患者の関係性や医療の在り方を規定してきた2つの原則が、根本から転換されようとしています。
協会は、今年度の地区医師会の先生方との懇談会では、こうした動きに対して意見交換し、国・自治体への要望活動につなげていく予定です。