そこのところが知りたかった!医療安全Q&A Part 2 vol.5 承継後の賠償責任  PDF

あやめ法律事務所
江頭節子弁護士

Q、診療所を承継したのですが、患者から前院長の時に発生した医療事故について損害賠償請求を受けました。このような場合でも、承継後の医師が対応しなければいけないのでしょうか。

A、診療所の承継にはさまざまな法的手段(法形式)があり、どの法的手段を取ったかによって答えが変わります。
①前院長が「Aクリニック」の屋号を掲げた個人事業主で、廃院後、入れ替わりに現院長が同一場所で新規に診療所を開設した場合、新旧の経営者は異なる法主体なので、事業譲渡契約で特に潜在的な賠償義務を引き受けると合意していない限り、現院長(またはその法人)は前院長の賠償義務を引き継ぎません。患者側から賠償請求の連絡が来たら、前院長との間で解決するよう案内します。
②前院長の診療所が法人でも、これを現院長が事業譲渡契約の形で承継した場合は同様です。
③前院長の診療所が法人で、理事長が前院長から現院長に交替しただけの場合は法人格は承継前後を通じて同一ですので、当然法人が賠償義務を負い、現院長が対応することになります。
④前院長の診療所が社団医療法人で、これを現院長が買収した場合も(出資持分の譲渡や退職金調整により)、法人格は承継前後を通じて同一ですので、現院長が対応することになります。
⑤前院長の診療所が法人で、これが医療法57条の「合併」により現院長の法人に承継された場合は一切の権利義務が承継されます。
⑥前院長の診療所が法人で、これが医療法60条、61条の「分割」で当該診療所の承継がなされた場合には、「分割」契約書で潜在的債務を承継しないとすることができます。ただし患者側保護のため、患者側は現院長の法人が承継した財産の額を上限として、現院長の法人にも請求できます(医療法60条の6第3項、61条の4第3項)。
このように、医療承継に伴う権利義務の関係は非常に複雑ですので、医療承継をするに当たっては、法務、税務の専門家に相談し事前に十分検討、調査して下さい。

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