主張 保険料軽減も国民皆保険危機  PDF

つい先日、ナイチンゲールの生涯をモチーフにした演劇を見る機会があった。クリミアの天使とも呼ばれた人の解説は不要であろうが、巧みな演出も相まって感動の連続であった。まさしくクリミア戦争が舞台であるため現状と重なる部分があり、一層シリアスに感じる部分が多かった。病める人々に寄り添い生涯をささげる姿はまさに天使であり、医療人を目指す若人必見と思ったと同時に、そういえば本稿執筆中の現在、参院選真っただ中であることを思い出し、議席を争う候補者にもぜひとも本公演を見て、医療の持つ本質を再確認していただけたらと淡い期待を抱くことともなった。
本紙発行時には当然選挙結果も判明しているはずであり、民意に基づく政策が実行されていくことになろうが、今回の選挙の争点の一つとして社会保障そのもののあり方が焦点となり、その二大論点は、病床削減とOTC類似薬の保険外しであろう。殊に医療機関がOTC類似薬の処方をできなくなった場合の影響は計り知れない。保険外しをされてからの取扱いの詳細がまだ決定されていないが、例えば「ロキソプロフェン」を例にとってみると、院内処方の医療機関では保険適用の薬剤と合わせて処方できなくなる可能性があり、その場合はわざわざ他の薬局等で購買することになる。「フェキソフェナジン」や「酸化マグネシウム」をはじめ多数の薬剤が医療機関で処方できなくなってしまうと、想像を絶する甚大な影響となろうことは想像に難くない。
何度も言うが、医療者側、患者側とも大きな打撃となる。ある政党の主張では、この結果公的医療費が数兆円削減され、ひいては社会保険料が軽減されるという。しかし裏を返すと、これらの薬剤は全て自費で購入することになる訳で「セルフメディケーション」という名の下に「国民皆保険制度」が大きな危機を迎えると捉えるべきではないか。今まさに、医療制度は大きな岐路に立っている。

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