協会は今国会二回目の国会議員要請を4月9日に実施した。京都選出の全国会議員を訪問、山井和則議員(衆・立民)、福山哲郎議員(参・立民)、倉林明子議員(参・共産)と直接面談した。今回の要請は保団連事務局とともに行った。要請内容は引き続き医療法等の一部を改正する法律案に関してのもの。新たな地域医療構想をめぐっては従来からの国の医療需給推計が地域の医療ニーズを正しく把握していない点を指摘。医師偏在是正対策については新たな外来医師過多区域(仮称)での開業規制策を批判し、さらに新設のオンライン診療受診施設の懸念を伝え徹底審議を求めた。
特に今回強調したのは新設の「オンライン診療受診施設」についてである。
法案は国のガイドラインによって従来から運用されてきたオンライン診療を医療法に位置付ける。オンライン診療はコロナパンデミックを機になし崩し的に推進されてきた。コロナ禍にあっては感染拡大防止の観点から有意義とされ、医師不足地域での活用も議論される一方、医療の産業化・市場化の方策としての側面がある。
新設の「オンライン診療受診施設」は医療法の「第四章 病院、診療所、助産所等」に規定される施設であり、専ら患者がオンライン診療を受診する「場」である。オンライン診療を提供するのは「医師または歯科医師」であり、その勤務する病院または診療所は「オンライン診療実施病院等」とされる。新たな受診施設の設置場所について厚労省は「郵便局や公民館等」と説明しているが法案上、設置者は設置後10日以内に都道府県知事に届け出ることとされ、「自由開業」であるため、必ずしもいわゆる「過疎」のみの設置に限られるものとは見受けられない。さらに設置者については民間営利企業の参入も否定されておらず、医療の産業化・市場化と親和的なものは確実である。
すでに「規制改革実施計画」(23年6月16日閣議決定)により「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設」が24年から認められてきた経緯もあり、新たな施設は厚生労働行政上の必要性以上に経済産業政策として浮上してきたと見るべきであろう。
要請では次の点を強調した。
原則としてオンライン診療が「普遍化」し、本来、対面で診療すべき場合に濫用されるようなことがあってはならない。オンライン診療はあくまで緊急時等、真にやむを得ない場合における対面診療の補完であり、窮余の一策とすべき。少なくとも、営利化・産業化につながるような方向での検討は中止を求める。
オンライン診療とオンライン診療受診施設に関する規制的ルールを定めるべき。日本医学会連合が22年に示した「オンライン診療の初診に関する提言」等、医学専門組織の意見に依拠し、オンライン診療に適さない各科の「症状」や「処方薬剤」について明確にし、少なくとも初診からのオンライン診療を対象から除外すべき。
オンライン診療受診施設の設置者について、営利目的の企業は除外し、公立・公的医療機関をはじめとした公共性の高い法人のみ開設を認めるべき。
オンライン診療受診施設には看護師等の医療専門職の配置を必須とすべき。
医療法等の一部を改正する法律案は現段階では明確に与野党対決法案と見なされる状況にはないが、オンライン診療をめぐるもの以外も日本の医療制度の根幹に関わる深刻な内容を含むものばかりである。引き続き協会は与野党議員に対し、法案の問題点を分かりやすく伝えたい。
(上から面談順に)
山井・福山・倉林各議員