10月になって長期収載品の処方または調剤について選定療養が導入された。これによって後発品のある先発医薬品を使用するには先発品との価格差の25%(煩雑な計算を要す)を患者に支払ってもらうか、処方理由を処方薬剤ごとにコメント添付(5種類のコメントから選定)する必要がある。選定となる薬品は1100点程度あるようで、結果として当院も患者への説明や必要な医薬品へのコメント添付等の診療以外の仕事に忙殺される毎日となっている。
政府としては後発品の使用促進という意図があるようだが、すでに我々の医療現場では先発薬の薬効と患者の症状を見極めながら必要に応じて後発品へ切り替えてきており、今さらという感がある。しかも溢れ返るOTC薬品とは裏腹に医科用医薬品の供給不安定の状況が続く中での選定療養導入である。
思えば前回の診療報酬改定以来、マイナ保険証導入・医療現場への働き方改革・闇雲で根拠不十分な医療DXの推進・本年6月の不可解な診療報酬改定(ベースアップ評価料、生活習慣病管理料、入院医療実施基準の再編等)等と2年程でかなり強引に政府の医療施策を医療現場に押し付けてこられた感がある。これまでも医療現場としては理不尽とも思える報酬改定にも粛々と対応し、皆保険制度を継続し国民の健康を守っていくという思いを持って日々研鑽努力をしてきた。しかし今回の施策はどれも制度設計が不十分な感じがするものばかりで、将来の日本の医療の姿が見えてこないものが多い印象である。このような状況が続けば、せっかく志を持って医療現場を支えている医療従事者においても、しんどくて危険で労働に対する対価が良くない医療現場からの離職が進み、医療提供体制が崩壊し、皆保険制度の維持が困難となることが懸念される。
少数与党となった今こそ医療現場の者が力を合わせて今回の医療施策の矛盾点を訴えて、一度立ち止まって医療現場の声を聞き入れてもらえるようにしたいものである。
MENU