コロナワクチン接種を巡って
水谷正太・西陣医師会長にきく
5月29日から始まった京都市の集団接種のようすや京都市の新型コロナウイルスワクチンの接種体制について、6月14日、西陣医師会の水谷正太会長にお話をお聞きした。
――上京東部医師会・西陣医師会が実施している集団接種のようすは
5月29日から始まった集団接種では、午前120人枠、午後120人枠で実施している。現状、上手く進めることができており問題ないが、3週目から2回目接種の人たちの接種が始まるので、そこが不安要素だ。
今のところ、集団接種の開場時間を延長し、倍になる人数に対応する予定。幸い、上京東部医師会と西陣医師会が連携をとり医師、看護師などの出務手配も上手くいっている。
万一アナフィラキシーなどの副反応が発生した場合も、会場には医師が5人、看護師が7~8人出務しているので、大変心強い。
――集団接種の出務調整などは順調ということですが、一方で出務報酬支払い事務には不安があるとお聞きしました
医師だけなら出務報酬支払いは可能だと思うが、税務処理も含めて、看護師、薬剤師への出務報酬支払い事務を担うのは、西陣医師会では荷が重いという話になっている。
西陣医師会は、北医師会、上京東部医師会と足並みを揃えることが多く、出務報酬支払い事務に関しても事務局への負担を考慮してお世話になっている税理士事務所へ業務を委託しようかと相談しているところだ。
これから一般住民の接種が開始される。高齢者への優先接種は7月末完了予定だが、まだまだ先は長い。各地区医師会で事務局員の人数も違い、体力に差がある。もちろん、事務局ですべて担えるという地区医師会もあるだろうが、多くが困惑されている状況ではないか。地区医師会で担えなければ委託するしか方法がないが、個々ばらばらに委託先を探し、交渉し契約するのではなく、ある程度京都市の関与のもと、目安となる金額なども提示いただくなど、配慮していただければ良かったと感じる。
――京都市の接種体制については
京都市が個別接種を中心に据えたのは、かかりつけ先となる開業医を大事に考えてくれた結果だと思う。ただ結果論になってしまうが、今回は緊急事態だったこと、各医療機関の受け入れの容量にも差がある中では、集団接種を先に始めて、こぼれてくる接種希望者を各医療機関で受け止めるほうが無理がなかったのではないか。
各医療機関は何とか接種を進めようと、日常診療の合間を縫って時間外、休診日に接種を実施している状況で、かなり無理をしていただいている。それらを目の当たりにすると、京都市の計画の段階で地区医師会にも相談してもらえていたらと思わざるを得ない。
――今後、一般住民接種が進められる中での課題について
かかりつけ先が接種協力医療機関ではなく、集団接種会場に行くことが難しい接種希望者が取りこぼされることになるが、先日、往診をしながら接種を実施する医師が報道されていた。西陣でもかかりつけ先かどうかにかかわらず、往診して接種を行ってくれる医師を集めてはどうかと考えている。
ただし、初診だと往診料は算定できず、接種料のみとなってしまう。お金の問題ではないというものの、ほぼボランティアになってしまうのもおかしい。京都市にはそういった少数弱者を救う施策、支援策を講じてほしい。
一方で、接種をしたくない人の権利を守ることも大事だ。成人は自身で判断し、接種する・しないを選択すれば良いと思う。しかし、児童は多くが親の判断になる。そこに躊躇が生まれても何ら不思議はない。できたばかりのワクチンで、数年後、十数年後の知見は何もない。もしも数年後に何らかの障害が出てしまったら、本人も辛いし、自責の念にかられる親も辛い。
政府は「任意接種」と謳っているが、接種を前のめりに進めざるを得ない自治体からの喚起は少ないように思う。同調圧力の問題をしっかり認識し、「打たない権利」をしっかり守ってほしい。
コロナワクチン接種という政策の中で、京都市の現場担当者もかなり振り回されている。その苦労は大変なもので、我々もできる限り協力していきたい。集団接種の体制においても、地区医師会から意見を挙げれば柔軟に対応していただいている。今回の件を通して、自治体ともさらに良い関係を築いていければと思う。