京都市は区ごと設置を6割超が望む「保健所の役割」で地区懇アンケート  PDF

 新型コロナウイルスの感染拡大で、対策の中心的役割を担う保健所の役割がクローズアップされた。限られた人員・資源の中で最大限の対策を講じるも、大きな業務負荷が発生し十分な機能を発揮できない状態に陥り、PCR検査の実施件数が伸びない要因の一つともされた。そもそも旧保健所法が1994年に「地域保健法」に改められ、保健所の設置要件が緩和されたことで、全国の保健所が半減した。京都府は、12カ所を04年に7カ所1分室に統廃合している。京都市は各行政区に11カ所あったものを、10年に1カ所にしている。未知のウイルスによるパンデミック対応を保健所が担うべきかという議論もあるが、協会はあらためて保健所の在り方を考えるアンケートを実施。「京都市」とそれ以外の「京都府」、それぞれ2020年10月から21年4月にかけて地区ごとに実施した。「京都市」は会員1462人に送付し、214人が回答(回答率15%)、「京都府」は692人に送付し、152人が回答(回答率22%)。

市 半数近くが集約化「知らない」

 保健所の本来の機能(新型コロナ対応以外)について、京都市保健所が本庁1カ所に集約されて、「特に不便は感じていない」42%に対し、「困ったことがあった」は11%。「それ自体を知らなかった」が47%と最も多かった(図1)。
 地区ごとにみると「困ったことがあった」(24人)が多いのは、西陣5人、左京と山科が4人、右京3人の順で、具体的には「コロナ対応」11件、「難病申請」2件、「精神保健相談」2件、「結核患者への対応」1件、このほか「区ごとの保健統計がなくなった」「解決しないままほったらかし」など。
 保健所と連携しての問題解決は「区ごとにあった頃」と「集約化後~新型コロナ前」を比べると、「変わらない」が37%、「減った」が9%、「増えた」は4%。これも「それ自体を知らなかったので判断できない」が49%で最も多かった(図2)。

府 再設置求める声も

 京都府の保健所が12カ所から7カ所1分室に統廃合されたことについて、「それ自体を知らなかった」「特に不便は感じていない」が40%で並んだが、「困ったことがあった」も20%あった(図3)。
 地区ごとにみると「困ったことがあった」(30人)が多いのは、亀岡9人、綴喜8人、与謝・北丹3人、舞鶴、相楽、綾部が2人の順。特に上位地区のうち亀岡、京田辺、宮津、綾部はなくなった地域であり、「遠くなった」「顔の見える関係が失われた」「地域密着でなくなった」などの声が多く、「再設置してほしい」との要望がある。その他、「以前ほど難病患者のことで保健師と専門的な話ができなくなった」「結核院内感染の際に助けてもらえなかった」など。
 保健所と連携しての問題解決は、04年統廃合前と比べると、44%が「変わらない」と答えたが、「それ自体を知らなかったので判断できない」が41%、「減った」は8%、「増えた」は7%(図4)。
(2面に続く)

京都府の保健所統廃合(2004年)
峰山・宮津・舞鶴・綾部・福知山・園部・亀岡・周山・(京都市)・向陽・宇治・田辺・木津 → 丹後・中丹東・中丹西・南丹・(京都市)・乙訓・山城北・山城北綴喜分室・山城南

図1 京都市保健所が1カ所に集約されて
図2 京都市)保健所と連携しての問題解決は
図3 京都府の保健所が統廃合されて
図4 京都府)保健所と連携しての問題解決は

所長は医師であるべきか市と府で分かれる

 京都市は区役所が保健所の支所機能を担っているが、支所長は医師であるべきかについては、「必ずしも医師でなくてよい」が53%で「医師であるべき」42%を上回った(図5)。
 地区ごとにみると、「医師であるべき」が多かったのは北・下東53%、右京・西京50%。「必ずしも医師でなくてよい」が多かったのは下西80%、中東・伏見63%、上東56%、中西・東山55%。
 京都府は、「医師であるべき」が61%、「必ずしも医師でなくてよい」が34%と、「京都市」と逆転した結果となった(図6)。
 地区ごとにみると、「医師であるべき」が多かったのは相楽80%、綾部75%、乙訓70%。

保健所の設置は「区ごとに」63%

 京都市の保健所設置場所については、「区ごとに設置すべき」が63%で、「本庁1カ所でいい」21%を大きく上回った(図7)。
 地区ごとにみると、「区ごとに設置」の割合が高かったのは左京93%、山科80%、右京77%、西陣・西京75%。逆に低かったのは中東19%、中西・東山45%、下東47%。
 京都府の保健所設置数については、「現在のまま」が41%、「増やすべき」が22%、「わからない」が37%であった(図8)。
 地区ごとにみて「増やすべき」が特に多かったのは綴喜47%、亀岡38%。

市は半数が保健師の「地区担当制」望む

 地域における保健師の保健活動について、かつては担当地区に責任をもって活動する「地区担当制」だったが、今はほとんどが業務ごとに地区を問わない「業務担当制」となっている。厚労省は13年4月、「地区担当制」の推進に努めるよう通知しているが、京都市は業務担当制のまま。
 京都市ではこの保健師の「地区担当制」について、「地区担当制とすべき」が49%、「現在のまま」14%、「わからない」37%であった(図9)。
 地区ごとにみると、「地区担当制」の割合が高かったのは上東67%、左京63%、右京59%など。
 京都府では保健師の「地区担当制」について「地区担当制を導入もしくは強化すべき」38%、「現在のままでいい」16%、「わからない」45%(図10)。
 地区ごとにみると、「地区担当制」の割合が高かったのは舞鶴60%、綴喜58%。

保健所に期待することは何か

 〈京都市〉今後、保健所に期待することは、①「地域保健や感染症関連で何かあった時の迅速な対応」85%、②「保健・医療に関わる住民からの相談に応じる体制の強化」44%、③「公衆衛生知識や情報についての発信力の強化、住民への普及」「地区医師会との連携強化」が43%、⑤「個別家庭訪問など、専門職職員による住民生活密着型の活動の強化」が30%、⑥「障害・福祉など関連領域で活動する団体や機関との連携強化」25%―の順であった(複数回答)。
 〈京都府〉今後、保健所に期待することは、①「地域保健や感染症関連で何かあった時の迅速な対応」88%、②「地区医師会との連携強化」55%、③「公衆衛生知識や情報についての発信力の強化、住民への普及」52%、④「保健・医療に関わる住民からの相談に応じる体制の強化」40%、⑤「障害・福祉など関連領域で活動する団体や機関との連携強化」30%、⑥「個別家庭訪問など、専門職職員による住民生活密着型の活動の強化」24%―の順であった(複数回答)。

図5 京都市)保健所支所長は医師であるべきか
図6 京都府)保健所長は医師であるべきか
図7 京都市)保健所の設置場所
図8 京都府)保健所の設置数
図9 京都市)保健師の「地区担当制」
図10 京都府)保健師の「地区担当制」

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