協会にはさまざまな医事紛争の相談が持ち込まれてくるが、その中で毎年報告されるものに採血時の神経損傷の事故が挙げられる。
総じてこの事故の対応はとても苦労する場合が多い。調査の結果、注射を施行した者に過誤が認められない事態も珍しくはない。過誤なしとの判断は医療者の技能・手技等に問題がないということで、その名誉は守られたとしても、実際に注射をされて注射部位に痛みを感じている患者に、経済的援助(賠償金支払い)ができないことに、医療側も患者側も納得しない場合がある。
協会もその気持ちは十分に理解しているつもりだが、教科書通りの正しいとされる方法で注射を施行しても事故は不可抗力的に、つまり過誤がなくても起こり得るということを思い出していただきたい。
万一、注射による神経損傷の事故が発生した場合には、患者への説明等に以下の項目を参照していただければと思う。
①注射・採血施行の適応②刺入部位の適応(選択部位の優先順位の適切さ)③注射針の太さ④注射針の種類(採血針・翼状針)⑤真空管か否か⑥刺入角度⑦刺入深度(刺入後に血管を探ったか否か含む)⑧刺入回数⑨刺入時の患者の痛み等の訴えの有無(有の場合ただちに中止したか)。
4月25日(木)午後2時より「ひと刺しで神経損傷?~本当に正中神経損傷ですか? CRPSですか?」と題した医療安全講習会を開催する。講師は、十条武田リハビリテーション病院院長の勝見泰和氏と京都中央法律事務所の福山勝紀弁護士をお招きする予定なので、ぜひご参加いただきたい。
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