京都府保険医協会 副理事長 渡邉 賢治
2017年11月10日
第48回衆院選は、自民党が改選前議席と並ぶ284議席を確保、公明党の29議席(5議席減)と合わせ定数465の3分の2超を与党で維持した結果となった。
今選挙で与党が争点としたのは、自衛隊明記を含む憲法改正と消費増税による「全世代型社会保障」実現である。この間、安保法制廃止と改憲反対で市民と野党の共同が積み重ねられてきたが、民進党の前原誠司代表による希望の党への合流・分裂で大きな痛手を受けた。結果として安倍政権が、憲法改正発議できる定数の3分の2を上回る議席を確保し、「改憲賛成派」が野党も含め当選者の8割を占めるという状況を、私たちは重く受け止めなければならない。一方で、立憲民主党が「下からの政治」を掲げて支持を広げ、社民、共産との候補者一本化が各地で実現。政治を変えたい声の受け皿は今後の可能性を残した。新自由主義改革による国づくりと軍事大国化に対抗する政治を実現する担い手となっていけるのかを注目したい。
消費税増税は全て社会保障に充てるということで、社会保障と税の一体改革が成立して5年、現実は社会保障制度の充実とは程遠く、給付削減・自己責任ばかりが推し進められてきた。次回増税の使途は「全世代型」をうたい、幼児教育・保育の無償化とされている。財務省は来年度診療報酬「2%半ば以上」マイナス改定や後期高齢者の窓口負担増を選挙後早々に提起した。社会保障充実か消費税引き上げか、この択一を迫る方式では社会保障の充実どころか更なる疲弊を招くことを私たちは批判してきた。財源を確保した、社会保障の実感ある拡充を私たちも議論しながら求めていきたい。
また、自民党の比例区の得票率は33%。小選挙区での得票率は48%だが、それは全有権者の中での得票率(絶対得票率)では25%でしかない。第1党の獲得議席の比率が得票数に比べて大きくでてしまう小選挙区制度の特性が、今回の結果にも大きく影響したといえる。選挙制度の見直しも喫緊の課題であろう。
選挙後の朝日新聞の世論調査で、自民大勝の理由について「安倍首相の政策が評価された」26%に対し「そうは思わない」が65%とし、安倍首相の進める政策に54%が「不安の方が大きい」とした。さらに憲法への「自衛隊明記」については、「反対」が45%で「賛成」の36%を上回っている。与党への白紙委任を与えたわけではなく、不安さえ覚えていることが見て取れる。
このような状況において協会は、国民の声がしっかり活かされる政治、国民が求める平和憲法の理念を活かし、世界から戦争による殺戮の撲滅、そして社会保障を抑制する政策からの転換をこれまで以上に全ての政党に働きかけ、政府に要求していく。