代替医療の光と影 医師の慎重な対応が求められる  PDF

 昨今、やたらと目につく「マッサージ」とか「揉みほぐします」等の看板。おまけに「健康保険で治療できます」といった内容のうたい文句が氾濫している。
 これら、鍼灸、柔整、あんまマッサージ、カイロプラクティック等を総称して「代替医療」とよばれることが通例であり、それらの一部には健康保険の適用が認められていることも周知のとおりである(なお、「代替医療」はさらに広い範囲を含む場合もある)。
 実際に、診療の現場では患者が少なからず代替医療を受け、一定の恩恵を被っている事実に直面する一方、それら各資格とその詳細な行為内容について、我々医師サイドの理解は、必ずしも十分とはいえない現状である。
 当然ながら、健康保険による治療行為が可能なのは、国家資格である「はり師」「灸師」「柔道整復師」「あんまマッサージ師」までであり、いわゆる業界資格である「整体師」等はその対象とならないし、たとえ国家資格であっても、健康保険の適用は「鍼灸院」では6疾患、「整骨院・接骨院」では5種のケガのみ、「マッサージ師」も「関節拘縮」「筋麻痺」の2症状に対する施術に限定されているはずである。
 すなわち、健康保険の適用は強く制限されているにもかかわらず、何でも健康保険が使えるがごとき誤解を招くような表現を少なからず目にするところである。
 ちなみに、これら柔整・鍼灸・マッサージを合わせた健康保険下の療養費は最新の資料によれば、年間4875億円(14年度)と莫大な額にのぼり、鍼灸・マッサージに関しては国民医療費全体の伸びをはるかに上回る伸び率で増加し続けている。来年度診療報酬改定の具体的動きの中で、注視すべきであろう。
 一方、鍼灸・マッサージの施術に関して健康保険適用を受けるためには医師の同意が必要であり、医師サイドがまったく無関係とはいえない側面があることも事実である。患者からこれら施術についての同意書の記載を依頼された場合、慎重な対応が求められている。

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