訪問看護療養費と子育て支援医療に重点/府の福祉医療見直し議論  PDF

訪問看護療養費と子育て支援医療に重点/府の福祉医療見直し議論

 京都府は10月31日、第2回京都府福祉医療制度検討会を開催した。第1回検討会での、「複数ある福祉医療制度のうち、優先順位を付けて議論すべき」との意見を踏まえ、今回は?訪問看護療養費の助成対象追加?子育て支援医療助成制度の通院に係る助成対象年齢の拡大と自己負担額の上限―の2点について重点的に見直すこととした。

 ?については、訪問看護ステーションからの訪問看護(訪問看護療養費)に関して、「毎月の自己負担額が大きい」との声があるほか、43都道府県で訪問看護療養費が福祉医療の対象になっている実態などを受け、「京都府においても早急に対象とすべき」とされ、否定的な意見は出されなかった。

 ?については特に、小学生児童の保護者でニーズが増加している。京都子育てネットワーク代表の藤本明美氏は、子どもたちの保護者からのヒヤリングより「3歳以上でも風邪にかかる機会は非常に多い。医学的に好ましくないのはわかっているが、負担が苦しいため、3歳未満と3歳以上の2人の子どもがいる場合、前者で多くの薬剤をもらい、後者がいざというときにそれを服用させるケースもある」といった切実な実態を説明し、その上で「制度として見直されるべき問題」として対象年齢拡大の必要性を訴えた。

 また、医科外来を受診した者の1カ月当たり自己負担額の平均は、3〜9歳(小学3年生)と3〜12歳(小学6年生)では、どちらも3000円台であることから(下記資料)「入院と外来の助成対象年齢を統一するため、自己負担の上限を現行(3000円)のままで、外来を小学校卒業まで拡充するのが妥当」との意見が多数派となった。

京都府内の通院に係る1ヶ月当たり自己負担額。

 一方で、次のような意見もあった。同志社大学経済学部教授の伊多波良雄教授(検討会副座長)は、事業効果を重視し、十分な効果がない場合、拡充は行うべきではないと主張。事業効果とは、「福祉医療助成を受けずに医療保険の自己負担を払うよりも福祉医療制度を利用する方が、結果として健康程度が上がった」などの分析数値を示すという。氏は加えて「子育て支援医療費助成は年齢による線引きであり、所得再分配機能はなく、導入する根拠に乏しい。所得再分配機能を持たせるためには、せめて一定の所得制限を導入すべき」として、制度そのものを見直すべきとの見解を示している。

 協会が従前より要望している、訪問看護療養費を助成対象とすることや、子育て支援医療助成制度の対象年齢引き上げと負担軽減が重点検討項目に挙がり、さらに、訪問看護療養費や子育て支援医療助成制度の対象年齢に関しては要望項目の実現に光が射していることは評価できる。

 しかし、協会は、小学校卒業までの窓口負担を無料とし、現物給付化とするべきだと考えている。子どもは親の経済状況に関係なく、等しく医療が受けられる機会が与えられるべきであるからだ。福祉医療とは、公費で子どものいのちを守る制度であり、藤本氏の「現場の生の声」からも、対象年齢の拡大の必要性と同時に、福祉制度に所得制限は入れるべきではないということがよくわかる。そして「健康程度を数値で示す」ということは検討が難しく、また実態になじまないだろう。

 今回の議論を整理した上で、京都府から具体案が提示される。訪問看護療養費を福祉医療の対象にすると1・2億円の追加事業費が、子育て支援医療助成制度を通院の助成対象年齢を自己負担の上限を現制度のまま小学校卒業まで拡充すると8・6億円の追加事業費がかかると試算されており、その財源をどのように捻出するかがポイントとなる。その引き換えに子育て支援医療助成制度への所得制限が導入されぬよう注視しなくてはならない。

訂正

 

第1回の報告記事(第2800号)の中で、母子家庭医療助成制度について「所得制限を引き上げる可能性も示唆された」は「(略)引き下げる可能性も示唆された」の誤りです。お詫びして訂正します。

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