私のすすめるBOOK/新たな福祉国家への標となる書  PDF

私のすすめるBOOK/新たな福祉国家への標となる書

『新たな福祉国家を展望する』福祉国家と基本法研究会、井上英夫、後藤道夫、渡辺治編著、旬報社、定価1,575円(2011年10月刊)

『新たな福祉国家を展望する』
福祉国家と基本法研究会、井上英夫、
後藤道夫、渡辺治編著、旬報社、定価
1,575円(2011年10月刊)

 最近、幸せな生活、豊かな生活とはどんなものなのかをふと考えることがある。いつもは何気なく暮らしている生活だが、この生活がこれから先、永遠に保障されているのか心配になることがある。

 日が暮れるのが早くなったこの頃、仕事が終わって帰ると明かりがともった家がある。ほっと安心することができる。

 幸せな、豊かな生活とは、安心して暮らすことができる家があり、温かい家庭がある。贅沢とはいわなくても、日々の糧がある。また、子どもたちには、充分な教育を心配なく受けさせることができる。そして、そういった生活を過ごせるための仕事がある。また、いつでも安心して受けることができる医療がある。月並みな思いだが、こういったことが最低限保障されている社会が大前提だと思う。そしてそうあってほしいと願う。

 でも、今の社会はどうだろう。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とする憲法25条で本来保障されなければならない生活が充分に保障されているだろうか。とても疑問に感じる。

 10月15日に「今なぜ社会保障基本法・憲章か」のシンポジウムが京都府保険医協会主催で開催された。社会保障基本法、社会保障憲章を提言し、憲法25条に命を吹き込み、さらに力をもたせることで、今の日本の社会を新しい福祉国家に変えて行こうという強い意志を感じることができた。『新たな福祉国家を展望する』は、その社会保障基本法、憲章を私たちに示し、福祉国家への進むべき方向を伝えてくれる。ぜひ多くの方に読んでいただいて、これを大きな武器として福祉国家へと日本の社会を変えていきたい。みんなの思いが一つになれば、必ずそれは現実になる。

(西陣・渡邉賢治)

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