医療安全対策の常識と工夫(49)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(49)

意外に要注意!医療安全対策の二つの要素

 医療安全対策の内容を大別すれば、「紛争(事故)予防」と「紛争対応」の二つになるでしょう。あるいは、事前・事後対応に二分されると言い換えられると思います。当然ながら、この2項目には強い関連性・連続性があります。ところが、現場では、この二つが分断されている様子が散見されます。

 その主な理由としては、医療機関内における体制の問題が挙げられるでしょう。具体的に言いますと、医療安全担当者の問題です。多くの医療機関では、医療安全担当者とは「紛争予防」専任者のことを示すようです。それ自体は何ら問題がないのですが、問題となってくるのは「紛争対応」が必要となった時です。

 医事紛争が発生した場合、その医療安全担当者が直接、紛争対応も任される場合と、紛争対応に限っては他の部門の事務等が担当する場合があるようです。前者の医療安全担当者が紛争対応する場合ですが、医療安全担当者は、医療事故の分析や統計処理等の専門的教育は受けていても、医事紛争に遭遇した患者さんへの対応等は経験の浅い方が多いようです。しかし、自分は医療安全の専門家として頑張らなければならないと、無理をすることもあるようです。そうすると、医療機関内で当該医師や事務部門と不協和音が生じたり、スムーズにことが運ばなくなることもあるそうです。

 一方で、紛争対応を事務部門が任される場合に、その事務が医療機関内における予防対策を熟知していない限り、やはり、紛争予防と対応が分断されてしまいます。せっかく蓄積された医療機関としての経験も十分に活かされない可能性も出てくるでしょう。

 本来ならば、患者さんの対応にも熟練した医療安全担当者を教育していくことが理想ですが、一朝一夕に用意できるものでもなく、それほどの余裕がない医療機関がほとんどだと思います。その場合は、紛争予防部門と紛争対応部門の連携の強化が必要となってきます。まずは、医療安全対策には「紛争予防」と「紛争対応」の2大要素があることを自覚して、それぞれの医療機関で工夫をしていくことが肝要と思われます。もちろん、この点についても、京都府保険医協会ができることは、協力を惜しみませんので、是非ともご相談させていただきたいと思います。

 次回は、若い女性患者の対応法の工夫についてお話しします。

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