読者のひっち俳句/隆英選
入選
早苗饗や都会育ちの嫁仕切り
珠子
佳作
靴脱ぎて走る渚や夏めきぬ
珠子
母娘づれ野蕗の籠をさげゆけり
珠子
風すこしなんてんの花ぽろぽろと
素
あぢさゐや事のはこびももどかしく
素
木の葉かげキラキラキラとしちだん花
素
更地越しに西山青く豊かなり
青磁
若き頃登りし愛宕火を灯す
青磁
青楓やさしき影の揺れている
絢子
奥里の山並映す植田かな
絢子
大徳寺竹の落葉の降るばかり
絢子
春愁やうるむ瞳で湖を見る
善郎
波の間に帽子とられて潮干狩
善郎
薫風や出会ひし人も手を上げて
善郎
(順不同、仮名づかい新旧自由)
短 評
珠子さん、早苗饗は田植の後の祝宴、慰労宴のようなものですが、今は機械化もあってだんだん廃れているでしょう。ほほえましくも珍しい景です。
素さん、七段花はシーボルトによって初めて記載されたアジサイ科の花で六甲山が原産地といわれます。山あぢさいの一種で小振りで花弁が五弁の星の形に重なって見えるので「ほしあじさい」ともいい品の良い花で、私も挿し木で増やしました。
絢子さん、落葉は冬の季語ですが、竹や常緑樹は夏に落葉するので夏の季語になっています。いかにも大徳寺らしいです。
善郎さん、原句は「人に手を」でしたが、お互いに挨拶を交わしたのでしょうから「人も手を上げて」としました。
選者吟
けものたちを処理といふ記事梅雨末期 隆英