診療報酬改定こうみる(8)  PDF

診療報酬改定こうみる(8)

精神科/通院・在宅精神療法の改定は診療所に打撃

岩瀬則文(右京)

 今回の改定で最も影響が大きく、かつ衝撃的だった項目は、診療所での主要な専門療法である「通院・在宅精神療法」(5分超、30分未満)が350点から330点に引き下げられたことである。精神疾患の病態は多様であり、経過も複雑で、治療計画に基づき、その都度適切な働きかけを行う。この診療所医療の中核がいきなり評価減とされたことは、驚きであり、かつ20点と大幅で受け入れ難い。医療の後退を招く恐れがあり速やかな増点を望む。

 その他通院医療の領域では、「認知療法・認知行動療法」420点が新設され、標榜科にかかわらず算定可能となった。精神科デイ・ケア他で早期加算20〜50点は地域医療の充実を図る方向として評価されるが、一方40点の増点とセットで食事提供加算48点(1食あたり)が廃止されたことで、マイナスとなる場合も多い。食事を提供するために、積極的に厨房施設を用意した所や、調理者を雇用した医療機関にとっては全く乱暴な話である。デイ・ケアの過半数が影響を受ける。重度認知症患者デイ・ケアでも同様の扱いとなった。食事は単なるサービスではなく、治療へのモチベーションを高める効果も大きく、何よりも利用者への配慮が望まれる。

 病診連携では認知症の疑いのある患者が、一般科から紹介された時の「認知症専門診断管理料」500点が新設された。届出が必要で、1回のみの算定である。連携を強化するため、既に認知症と診断されている患者が増悪した場合や、定期的な評価のための「認知症専門医療機関連携加算」50点も新設。

 入院に関連する項目としては、「児童・思春期精神科入院医療管理加算」が増点され、「強度行動障害入院医療管理加算」、「重度アルコール依存症入院医療管理加算」、「摂食障害入院医療管理加算」が新設された。従来あまり点数化されていなかった分野なので、一歩前進と言えよう。また「13対1 入院基本料」の新設は評価される。新たに重症度に相当するGAFスコアが導入された。入院早期がより重視され、急性期の入院料、救急・合併症入院料、身体合併症管理加算が増点。しかし慢性期の精神療養病棟入院料は、GAF40点以下の重症者を除き減点された。これらの結果より、総合病院の精神科病棟では増点となるが、多数の精神科病院では実質的にマイナス改定で経営に影響を与えかねない。

皮膚科/検査は全般的に増点も汎用処置は引き下げに

理事 山田一雄

 日本臨床皮膚科医会から「平成22年度診療報酬改定の概要」が発表されているので、これに沿って概観してみたい。

 初診料・再診料については他科と違いはない。乳幼児加算が3点増したことはあるが、診療所の再診料そのものは2点減となった。地域医療貢献加算3点、明細書発行体制等加算1点が新設も届出が必要とされており、必ずしもすべての皮膚科医が届け出ているわけでもないと思われる。私事ではあるが、私の診療所でも転送電話を設置しているので、「休日・夜間に、患者からの問い合わせや受診等に対応可能な体制を確保している」ということで地域医療貢献加算の要件を満たすが、これまでのところ、転送される患者からの電話は単なる診療時間の問い合わせのみで、本来の役割を果たしていない。

 往診料の70点増は、往診の機会が多い医療機関に影響があると思われるが、連日往診があるわけでもなく、診療所の経営への影響は医療機関によると思われる。

 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料500点の新設は大きいが、稀な疾患であり、やはり多くの診療所には縁のないことであろう。

 検査では外来迅速検体検査加算が5点増となっている。こまめに真菌の検査を行う医療機関では収入増につながるかもしれない。この検査そのものも15点増となっている。また細菌の培養や感受性検査も10点程度増となっており、一般に検査は評価されていると考えられる。このような検査の評価は病理検査でも行われ、点数増がなされている。

 一方、皮膚科で日常頻繁に行う処置で点数減となったものが2つある。いぼ焼灼法・いぼ冷凍凝固法が10点減となった。手間に比して点数が高いという判断があったとのことだが、必要な装置や、使用しなくても絶え間なく蒸発していく液体窒素の常時準備などの投資が評価されていないように思われて残念である。設備の設置や常時保管についても、手間としてもう少し評価があって欲しかったと思う。

(連載は今回でおわり)

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