参議院選挙にあたって 各党候補者に賛同を求めたい 10の課題
7月11日に投開票される第22回参議院議員選挙に当たって協会は、「各党候補者に賛同を求めたい10の課題」を京都選挙区の6人の候補者に送付した。
<届出順・敬称略>成宮真理子(共新)・二之湯智(自現)・河上満栄(民新)・中川卓也(み新)・福山哲郎(民現)・北川智子(諸新)
今回は従来のアンケートと異なり、回答は任意とした。期日までに回答を寄せていただいた候補は3人。成宮候補は全項目に賛同。河上候補は1、2に賛同し他項目についても検討を表明。福山候補は1、9に賛同。ご回答いただいた候補にお礼申し上げるとともに、今後の政策活動の参考にさせていただく。
1.医療を破壊し、国を破壊する「構造改革」路線からの転換を明言して下さい
小泉内閣以来の「構造改革」と「規制緩和」が医療にもたらしたものは、「医療崩壊」と「皆保険崩壊」です。この道の先に我が国の医療の未来はありません。「構造改革」路線からの転換を明言し、ナショナルミニマムを国として整備、保障していく責任について明確にして下さい。
2.医療を金儲けの草刈り場にする「成長戦略」競争はやめて下さい
…混合診療に対する規制の緩和は、我々保険医の誇りを傷つけ、世界一の医療制度を崩壊させます
現政権は、その「新成長戦略」において環境対策と医療を、成長を支える二大産業と位置付けていますが、その具体化の中で浮上している混合診療に対する規制の緩和は、日本の医療制度に対する国民の安心と信頼を揺るがしかねない危険な政策です。公的医療保険で必要な医療をすべて保障する、この制度理念を捨て去れば、そこには、地位や負担能力の低い国民に対する差別医療が発生し、医療現場と医療者の精神の荒廃が招来されかねません。「公的保険依存からの脱却」を目標とするような医療の市場化、産業化路線は、献身的に日本の医療保険制度を支えてきた保険医の誇りを傷つけ、次世代育成をも危うくするものであり、絶対反対です。
3.保険証は、すべての国民に渡して下さい
…保険証がなければ医療は受けられないのです
国保2100万世帯のうちの約2割に保険料滞納が生じるほど、国保料の負担は、過重なものになっています。そんな中、政府と自治体は、33万世帯を超える世帯に資格証明書を発行。彼らは実質、医療へのアクセスを拒否された形になっています。
資格証明書交付制度は、「保険料の支払いと引き替えにしか保険証を渡さない」という、非人道的な制度です。ただちに廃止して下さい。
4.窓口負担は、「限りなくゼロ」に近づけて下さい
…保険証1枚で医療機関に駆け込めるようにして下さい
現在の原則3割という患者窓口負担は、受診を躊躇するほどの重さであり、結果として手遅れ・重症患者の発生につながり、医療費の増嵩にもつながります。窓口負担は廃止し、制度を維持する費用は、税と保険料で賄って下さい。また保険料は、所得に応じた応能負担の保険料とし、どんな場合でも所得の一定割合は超えないよう、負担上限を設けて下さい。また、企業については、そこに勤める従業員や家族の健康が、ひいては企業活動が、公的医療制度があることによって守られているわけですから、その企業規模や利潤額などに応じた税や保険料の負担を求めるべきと考えます。
5.介護保険からの給付を「区分支給限度額制」から、医療保険と同じ「介護サービスの給付制」に転換して下さい
介護保険の要介護認定区分毎の支給限度額(月あたりの支給上限額)制度は、その限度額内に収まるサービスしか受けることができません。さらに給付はサービス購入に必要な費用のうち自己負担分を除いた「現金給付」(事業所が代理受領)です。これに対し医療保険は、「療養」そのものの給付を保障しており、医師が必要と判断した医療行為については、すべて医療保険からの給付が保障される形になっています。一般の国民からはその違いは分かりにくいものですが、この違いが、「いつでもどこでもだれにでも必要な医療を必要なだけ保障する皆保険制度」を支えているのです。今、介護家族の方々の団体からは、「要介護認定廃止」も提言されています。利用者にとって必要な介護サービスを十分に受けたいという願いを実現するには、給付制度のあり方そのものの転換が必要です。介護保険制度見直しにあたっては、第一にこの点を検討して下さい。
6.医療崩壊を促進している医療提供体制の「適正化」をやめて下さい
今医療現場には、「急性期入院→回復期リハ→在宅診療+介護保険ケア」が理想だという、あるべき医療サイクル像が押し付けられてきています。この「サイクル」内に居場所を確保できない医療機関の淘汰を「医療提供体制の効率化・適正化」と称して進める、究極の医療費適正化策なのです。それによって、これまで様々な条件や病態を抱える患者さんをフレキシブルに受け入れ、対応してくれていた中小病院や有床診療所が、閉鎖・縮小に追い込まれています。診療所に対する評価も、24時間、在宅患者に対応するタイプが理想という評価に偏っています。このステレオタイプの提供体制像が押し付けられることによって、地域医療の現場では、急性期の病院も含めて、安心して患者さんを受け入れることができないと言われるようになっています。これこそ官僚が机の上で書いた絵だとしか思えません。もっと現場の声を聞き、現場救済型の医療政策を進めて下さい。
7.地域医療崩壊の原因を生む維持期・慢性期の切り捨て、急性期・高度先進への政策的偏重をやめて下さい
6番目の要望にも重なりますが、急性期・慢性期・維持期、そのいずれの段階も患者さんにとっては、大事であり、必要な医療が受けられねばなりません。維持期リハ切り捨てに象徴される慢性期医療の軽視、診療報酬上の評価の引き下げや介護保険対象化での実質給付切り捨てなどをやめること。特に今年4月の診療報酬改定は、病院勤務医救済を口実に診療報酬改定財源の9割を急性期・高度先進医療機関に重点投資するという、著しく偏った内容でした。その結果が、中小病院や有床診療所、診療所の経営をさらに困難にし、地域医療崩壊を加速しようとしていることを知るべきです。
8.チーム医療を保障する条件整備は、十分に現場と議論して進めて下さい
病院勤務医の疲弊対策の形で導入されようとしている特定看護師(日本型の診療看護師)制度は、医師よりもコストのかからない「安上がりな看護師」による診療を可能とすることで医療費削減を図ろうという意図が透けて見えています。特定看護師制度の導入によってチーム医療の前進を図るのなら、その看護師たちに担ってもらう医療領域についての検討や、事故などが起きた時の責任関係などについて、患者さんも交えた医療現場ともっと協議をして進めるべきです。また、この問題は、提供される医療の安全性に関わって国の責任も問われる問題ですから、国民ならびに医療関連職種の社会的合意が得られるのかどうかも重要です。
9.後期高齢者医療制度の問題点解消の先送りや、他領域への拡大をしないで下さい
後期高齢者医療制度が持つ問題点の中で、最も大きなものの一つは、「その地域の医療費に連動して保険料が引き上がる仕組み」にあります。これが、保険料の引き上げで住民を苦しめたり、給付費抑制のためのさまざまな仕掛けを生み出したりするのです。後期高齢者医療制度を廃止して新たな制度に移行するには、一定の事務的経過期間が必要とされていますが、この仕組みの廃止には、そういった経過措置は必要ありません。制度廃止に取り組む第1段階として、まずは「高齢者医療確保法」の第93条から第124条までの改廃を即時提案いただきたいと思います。また、後期高齢者医療制度よりも先に、介護保険にはこの仕組みが導入されていますが、これについても廃止してください。そして今後、こういった仕組みを医療や介護に導入しないで下さい。
10.医療機関窓口での「明細書」発行義務化をやめて下さい
4月の診療報酬改定で医療機関に義務付けられた「費用の算定項目のわかる明細書」発行の義務化は、医療機関と患者の信頼関係、病名告知を求めない患者さんへの情報提供等に重大な影響を与えます。医師と患者の関係は、一般の購買消費関係のような「販売主」「顧客」の関係ではありませんし、それに擬することによってより良い医療が実現するというのは、幻想です。むしろ患者さんの立場を「医療保障の権利主体」から「医療サービスを買う消費者」へと変えることで、医療保障に対する公的責任を曖昧にするような政策はやめるべきです。