医界寸評
5月にニューヨークの国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開催された。「核兵器のない世界」の実現に向け、64項目の行動計画を柱とした最終文章が全会一致で採択された。十分満足いく結果ではないが、2005年のNPT再検討会議での決裂を考えると、核兵器廃絶に向けて重要な一歩を踏み出したと言えるだろう
▼今回の注目点は、「核兵器の完全廃絶に向けた具体的措置を含む核軍備撤廃」に関する「行動計画」に取り組むことで合意したこと。最終文書に「核兵器禁止条約」の文言が明記されたこと。また、中東の非核地帯化の実現に向け、2012年に米英ロと国連の共催で会議を開くことである。ただ残念なのは、米英ロ仏の核保有国の反対で、核兵器廃絶の期限や方法が最終文書に明記されなかった点である
▼さらに、日本政府は唯一の被爆国であるにもかかわらず、なんら具体的なイニシアチブを発揮できなかった。鳩山前首相、岡田外務大臣は、行けなかったのか? 行かなかったのか? 行くことを阻まれたのか? その理由を明言してほしい。今後、国民一人ひとりの力で、核兵器廃絶への強い指導力を持った政府に作り上げていく必要がある
▼今回のNPT再検討会議を受けて、8月に広島で原水爆禁止世界大会・国際会議が開催される。核兵器のない世界に向けて具体的な内容が検討されることを期待する。(治)