私の趣味 女房こそ わがライバル 七岡 聖魏(乙訓)  PDF

 私たち夫婦は結婚して早50年になる。
 若い頃から些細なことでよく喧嘩もしてきたが、大事には至らず今日までもちこたえてきた。どちらがより我慢強く耐えてきたのか? 今更ながら自分を褒めてやりたい。子育ても終わり少し気持ちに余裕が出てきたころからは5月の連休、8月の盆休み、正月休みなど機会を見つけては「グルメ&露天風呂」を求めて、よく2人で出かけるようになった。
 私にとっては旅先で美しい風景に出会うと、その都度シャッターを切るのも楽しみの一つであった。いつの日か自己流だけでなく、正しい撮影方法を習いたいと思うに至り、約10年前に木曜日開催のNHKデジカメ教室に入会。半年後には女房も誘い夫婦揃ってデジカメ教室会員となった。
 第1木曜は京都御苑、府立植物園など現地に集合し、思い思い2時間撮影。第2木曜は教室で持ち寄り作品の講評を受け、さらに数カ月後からは第3木曜も、兼ねてから興味のあった日帰り写真撮影バスツアー「森の会」に入会。文字通り、写真三昧大忙しの木曜日となり、今日に至っている。カメラをいじることもなかった女房には、ヨドバシカメラで当時出たての富士ファインピックスを購入。これが操作は簡単ながら、実にきれいな写真が撮れるものだからたちまち気に入り、写真撮影の楽しさにはまる礎となった。
 忙しい木曜日は楽しい木曜日ともなった。その後も時間を見つけては旅行にも行くが、お目当ては上げ膳据え膳グルメの他は露天風呂ではなく、写真撮影こそがお目当てと変わってしまった。最近好んで訪れる代表格は美ヶ原高原雪景色、上高地・乗鞍高原紅葉などか。夫婦の撮影スタイルは異なり、私は絞りなど撮影条件を一つひとつ確認し息を凝らして慎重に撮る、一方女房は何のためらいもなく感じたまま一気にシャッターを切る。それなのに待合室に飾る二人の写真を見ながら、当院通院中のMさんなどは“奥さんのは素直で見ていて気持ちいいが、先生のはがんじがらめで息が詰まって苦しい”と酷評する。何とも分の悪い話ではあるが、こんな会話を通して夫婦円満でいられることを喜んでいるのが本音である。
 私の努力か、女房の感性か、元気な間は永遠のライバルとしていつまでも幸せに楽しく競い合いたいものである。カメラに感謝! 感謝!

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