診察室の必需品 顕微鏡  PDF

和田 松太郎(綴喜)

 顕微鏡(オリンパスBH)こそが、昭和50年12月に京田辺の今の地に開業して以来ずっと使い続けている必需品です。1日5回として、ざっと5万回は使っているというか覗いている計算になります。
 患者さんが新患の方はもちろんのこと再診でもウロペーパーで各種項目を調べ、同時に遠心分離機で沈渣所見を調べるのですが、検査屋さんに出すより自分で顕微鏡を覗くほうが血球はもちろんのこと細菌の情報等が一目瞭然かつ即座に判るのです。
 特に大事なのは細菌で、400倍でみるとその大きさや形、そして動きや数量も読み取ることができるのです。例えば数量に限ってみると、風邪で発熱のある人は必ず細菌が多いし、アトピー性皮膚炎のある人、慢性の呼吸器疾患のある人、較べると格段に多いことが判ります。
 ただ残念ながら、細菌の同定を総てはしていないので正確には判らないのですが、大腸菌、腸球菌、ブドウ状球菌、その他緑膿菌、クレブシエラ等の桿菌をみることがあります。
 老人の沈渣検査で今まで2度経験したことですが、細菌類ではなく多数の非常に細かい揺らめき動く集合体に出会ったことがあるのです。その尿の人は後に膀胱がんで亡くなっておられることから、その動きはおそらくウイルスに因るものであったろうと想像できます。2度目もまったく同様のケースでした。倍率400倍ではもちろんウイルス本体はみえなくても、光の陰影なら存在を示すことができるはずだと納得させられました。
 最近、アトピー性皮膚炎でダニ抗原が陽性に出ることが多く、同時に尿中細菌も非常に多いことから、ダニに実際に感作されていなくても細菌が共通抗原となって陽性と出るのではないかと思われ、これは今後の私の課題の一つと考えています。
 顕微鏡でみられる沈渣所見には、慢性疾患ばかりではなく、身体の懈さが続く人、80歳を超えるほどの高齢で、最近ひどく痩せてきた人たちにも、細菌がいかに多いかが判ります。
 最後にウイルスによる遺伝子の塩基配列の破壊による発がんの可能性も含めて人の一生は常に微生物との戦いに終始するのだという思いに至りました。
 診療室の顕微鏡は私の診断上の必需品として、もうしばらく働いてもらうつもりです。

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