医療・介護費抑制へ財政審が建議 協会は給付率自動調整の仕組み撤回を要請  PDF

 政府が例年6月にまとめる骨太方針に向けて、財務省の財政制度等審議会は「春の建議」を5月23日に取りまとめ公表した。
 医療・介護保険制度に関しては、「持続可能性を確保」していくためとして23項目の具体的対応を求めている。この中で、従来から改革工程表で掲げてきた後期高齢者の自己負担2割化や受診時定額負担の導入、地域別診療報酬の活用などに加えて、「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」を提言している(表1)。
 この仕組みは、「経済成長や人口動態を踏まえ、支え手の負担能力を超えるような医療費の増加があった場合に、ルールに基づき給付率を自動的に調整する」ものとされ、医療費の増加があった場合は保険料・公費負担の割合を減らして患者負担割合を増やすことで対応するというもの。これに対し厚労省は、患者負担が過大になるおそれや国民の安心を損ねるおそれなどを指摘し反対する意見を表明している。
 協会は22日の理事会で、この仕組みの撤回を求める声明を決定し財務大臣宛に送付した。声明は、貧困の深化のなかで度重なる患者負担増により受診抑制が顕在しており、この仕組みが導入されれば、それがさらに加速することは明らかで、「将来にわたって7割の給付を維持すること」とした2002年の健保法附則にも反することを指摘し、「社会保障としての医療保障を壊すものでしかない」と反対を表明して撤回を求めている。
 この間、じわじわと患者負担が引き上げられてきた(表2)。協会はこの仕組みも含め、更なる患者負担増や地域別診療報酬が実施されないよう引き続き働きかけを行っていく。

表1 財政審「建議」の主な提言項目

・医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入
・後期高齢者の窓口負担2割化
・介護保険の利用者負担の原則2割化
・金融資産等を考慮に入れた負担
・薬剤自己負担の引き上げ
・受診時定額負担の導入
・医療費の適正化に向けた地域別診療報酬の活用

表2 安倍政権下の医療・介護の負担増等

■ 70~74歳の患者負担2割化
2014~18年度:1割→2割
■ 70歳以上高額療養費の限度額引き上げ
17年8月、18年8月の2段階で一般外来は1.2万円/月→1.8万円/月、現役並み外来は外来特例廃止、年収で3区分化
■ 紹介状のない大病院受診の定額負担
16年4月:500床以上
18年4月:400床以上
■ 入院時の食事療養費引き上げ
16年4月:1食260円→360円
18年4月:460円
■ 高齢者の入院時居住費引き上げ
17年10月:区分1は320円→370円、区分2、3は200円、18年4月:区分1~3とも370円
■ 後期高齢者の保険料軽減特例の廃止
17~19年段階的実施:所得割は5割軽減→廃止、元被扶養者は9割軽減→廃止
■ 介護保険利用料の自己負担引き上げ
15年8月:「一定所得のある人」2割、18年8月:「現役世代並みの所得の人」3割
■ 高額介護合算療養費制度の限度額引き上げ
18年8月:現役並みを年収で3区分化
■ 介護保険第2号保険料への総報酬割導入
17年8月から段階的、20年4月全面実施

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