産婦人科診療内容向上会レポート  PDF

安心して産み育てる社会へ 産婦人科医のチーム医療制も視野に

 第48回産婦人科診療内容向上会が8月20日、京都市内のホテルで開催された。参加者は102人。
 田村秀子京都産婦人科医会会長、協会の垣田さち子理事長のあいさつに引き続き、山下元支払基金京都支部審査委員により「保険請求の留意事項と最近の審査事情」について解説が行われた。
 次に座長の京都医療センター院長の小西郁生氏より、講師の吉村泰典氏の紹介が行われた。慶応義塾大学医学部を卒業、専門は生殖内分泌学で1995年慶應義塾大学教授、13年内閣官房参与(少子化対策・子育て支援)に就任。
 今回「わが国の少子化を考える―産婦人科医の重要性―」のテーマで、国の少子化の現状、対策について講演いただいた。以下、概要を掲載する。

 我が国の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの平均数)は戦後の4・32から2005年には1・26と減少し、急速に少子化が進行している。子育て費用はフランスではGDP3%以上であるが日本ではGDP1・2%しか使っていない。出生率回復のため高齢者への多額の税金投入の財源配分偏在を見直し、女性の健康と子どもの支援を充実させなければならない。
 少子化対策として、妊娠・出産・子育ての経済的不安要因解決のために、若者の雇用形態の改革が必要である。また、子育て就労環境の整備のためには、待機児童解消の抜本的改革が必須であり、併せて社会・企業男性の意識の改革が必要である。
 日本では、婚外子の養育は困難なことが多い。女性1人でも安心して子どもが産める成熟した社会の実現を目指す必要がある。08年には出産育児一時金の適正分娩費用が42万円に増額され、妊婦検診は14回まで公的助成となり、経済的負担の軽減で合計特殊出生率は15年1・46まで回復した。結婚して挙児を希望する人は不変だが、生涯未婚率は年々上昇している。最適生殖年齢が、25~34歳であることを女性は知る必要があり、学校教育は思春期から生殖知識の啓発を行って、妊娠や結婚のすばらしさを教えることが大切である。それとともに、高齢出産の危険性も教えなければならない。産婦人科医は、周産期医療に不可欠で重要である。しかし産婦人科医の減少はとどまらず、産婦人科で若い医師ほど女性が多い。女性の就労のためには、パートナーの理解と、仕事の継続意思が大切である。継続就労維持のためには、医療体制の見直しが必要で、現在の主治医制では個人に長時間、長期労働力を強いることになる。仕事のオンとオフを明確化するためにも、今こそ主治医制をやめて、チーム医療制とする転機と考える。それとともに、勤務条件、院内保育、夜間保育、病児保育、学童保育の確保、研修環境、指導体制の整備が必要である。
 以上、今回の講演で産婦人科医は大きな力を得ることができた。また、少子化改善への対策を明快に示され、大変有意義な時間となった。
(中京東部・小石清子)

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