冬の一日CO2濃度観察記録
公園、街路の樹木伐採・撤去はやめて
本紙3180号に「暑い夏の一日観察記録」を投稿した。7月末の大気中CO2濃度一日観察記録で、植物の光合成が日中のCO2濃度を減少させるのに寄与する結果が出た。春・夏は生育植物も多く、多光量・日照時間も長いため植物の光合成は盛んだが、冬は逆で光合成が乏しく、CO2濃度の下がりが悪いのではないかと推測される。したがって、冬の一日(1月27日)に夏と同じ条件で、自宅の玄関先で大気中のCO2濃度を、1時間ごとに測定した。測定器は中国製のポータブルCO2測定器AZ7755(前回測定器落下して故障、2台目)で、京都市西京区川島の住宅街の一角の玄関先に5分間静置の上、測定した。当日の最高気温は10・3℃、最低気温は1・6℃、日の出は7時、日の入は17時21分であった。その結果を夏の記録と比較してグラフに示す。
夏と比較して全般的にCO2濃度は低く、10時過ぎから低下し始め、15時頃までほぼ同じ値で16時頃から再び上昇傾向に入っている。結果として夏には大気中のCO2濃度は高めで、冬には低めであった(一般的には大気CO2濃度は春から秋にかけ減少し、冬は増加するとされているが)。冬は最大値と最小値の差は32で、夏は77あった。夏の方が冬に比較して、日中の濃度の差は増すことが示された。
2022年の世界の年間CO2総排出量は約368億d、日本は11億3500万dを記録した。木(スギ)1本の1年で吸収するCO2の量は約14sと言われている。自動車用燃料からの世帯当たりの年間CO2排出量は約1・3dとされ、これを木(スギ)が吸収するのに約93本を要する。ちなみに一人の人間が呼吸で排出するCO2量は年約320〜370gとされる。
樹木をはじめとする陸生・水生植物の力を借りなければ、産業革命以来大気中に蓄積されたCO2による地球温暖化で、今後私たち人類や地球の生命体は危機に立たされる。森林、マングローブ、農地、海水、都市の公園の樹木・街路樹などの植物の保全、再生が必要である。
最近、日本では東京・明治神宮外苑再開発を代表に、東京都千代田区、名古屋市、大阪市、明石市など全国の各地で、危険や開発を口実に、行政による公園や街路の樹木伐採・撤去が予定・強行されている。都市に緑を増やすことは景観の形成、自然環境の回復、周辺・土壌に動植物・微生物を呼び込む生物多様性の保全、ヒートアイランド防止・CO2吸収対策、防災、交通安全などに大きな役割を果たしている。一方、倒木の危険、落ち葉、根上がり、病虫害、見通しの悪さ、維持管理コストなどの問題点がある。
海外では緑を増やす都市が増えている。地球は人間のためにだけあるのではない。多くの生命体が地球に住んでいる。人間の都合によって生態系を乱したり、壊したりすることは許せない。身近な都市の公園の樹木や草地、街路樹を守ることは自然保護、生物多様性、地球温暖化防止で持続可能な地球を目指す大事な一歩となる。
(環境対策委員山本 昭郎)
1日のCO2濃度測定結果(冬と夏の比較)
2024/7/28
2025/1/27
5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00
系列 383 396 405 411 415 391 391 390 390 391 390 392 393 394 404 407 410
系列 474 463 445 420 421 417 416 405 403 405 398 397 401 404 408 406 411