そのところが知りたかった!医療安全 Q&A Part2 vol.2  PDF

あやめ法律事務所 福山 勝紀弁護士

医療費未払い患者の対応

 Q、来院時に「手持ちがない」と医療費の支払いを断る患者に、次の来院時にまとめて請求したが同様に断られ支払いが滞っています。医療費未払いの患者にどのように対応したら良いでしょうか。また、そのような患者の受診を断ることはできますか。
 A、場合によっては、医療費未払いを理由に断ることが可能です。
 いわゆる昭和24(1949)年厚生省通知では、「医業報酬が不払いであっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできない」とされ、医療費未払いを理由には診療を拒否できないかのような通知が出されていましたが、令和元(2019)年12月25日に発出された厚労省通知では、「支払い能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される…特段の理由なく保険診療において自己負担分の未払いが重なっている場合には、悪意のある未払いであることが推定される場合もある」とされ、医療費の未払いを理由に診療拒否することもあり得ると明言されました。
 例えば、明らかに貧困が疑われる様子(痩せていたり、服装がいつも同じなど)であれば、医療費の未払いが複数回あるとしても、悪意があるとは言えず、診療を拒否することは難しいと思われます。この場合は生活保護を受給するようアドバイスするなどの対応になると思います。しかし、明らかに支払い能力がある様子(服装がブランド物だったり、会社勤めをしていることが分かっている場合など)であるにもかかわらず、医療費の未払いが複数回ある場合には悪意があると判断して、診療を拒否することもあり得ると考えられます。
 また、複数回も(診察時以外でも)督促したにもかかわらず、次回来院時にも支払わないのであれば、2回の未払いでも、悪意があると判断できる可能性があり、診療拒否もあり得ると思われます。督促は電話、請求書の送付など方法の如何は問いませんが、後のリスクを考えると、証拠に残る形で請求書の送付を行った方が良いです。
 なお、医療費の請求期間は令和2(2020)年4月以降、5年間に変更されていますが(以前は3年)、5年以内に何らかの法的手続(請求書の送付だけでは足りず、訴訟等の法的手続が必要)を取らなければ消滅してしまう可能性がありますので、ご注意下さい。

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