自転車散歩とスケッチ 7  PDF

山下 元(乙訓)
輪行: サイクリング 公共交通機関を使ってサイクリングを始める所まで自転車を持って移動する事(広辞苑第七版)

京都府を輪行散歩
 輪行を始めたのは京都第二赤十字病院にいた頃です。産婦人科では通常勤務に加えて産科当直というオマケ勤務(年に約60回)があり、病院での滞在時間が大変長かった。当直室の天井を眺めながら、明けの時間の過ごし方を空想していました。
 「そうだ、自転車を電車に乗せよう」
 89年夏、シティバイク1号機を入手して輪行なるサイクリングを開始。
 暇を見つけては新車を連れて電車に乗りこみ、遠い駅で降りる。知らない町を自由に走り、明るいうちに自転車を畳み電車で帰宅する。汗を落とし、夕食に臨む。国土地理院の5万分1の地図に、走行した道を赤ペンでなぞっておく。
 この習慣は30数年後の今も続き、ほぼ同じペースで出かけます。最近は走行距離や時間を縮小していますが。
 京都の輪行散歩道の例を挙げます。
 京都に全長45kmの自転車専用道があるのをご存知でしょうか。嵐山から山城木津まで続くノンストップの細い一本道です。車と接触の心配はゼロ。最近は木津を越えて遠く和歌山港まで京奈和自転車道として延長されています。どの地点も近くに電車駅があるので、ツギハギに輪行することが可能です。
 京都市内の道もいろいろな走り方ができます。
 例えば、東山の長い山麓を辿るコースです。伏見、祇園、八瀬。季節ごとに走ります。桜の頃、紅葉の頃。そして大晦日や正月に走るのも味があります。オーバーツーリズムや初詣の人出があっても、輪行散歩にとっては何のその、渋滞を気遣う必要はありません。ドライブとは異なるところです。
 また例えば、大路や小路をむやみに真っすぐ走ってみるのも楽しい。子どもの時の軍隊遊びのように。自転車で市内を曲がらずに進んでみると、別の京物語が見える気がします。疲れたとか感性が低下したとか思い始めたら、駅を探してさっさと電車で帰途に就きます。
 京都府でのとっておきのプランは、朝早い山陰線の列車に乗って北に向かう輪行です。日本海が待ってくれています。光る景色、出会い、昼飯。ぜいたくな一日になること、請け合いです。
題の絵・挿絵も筆者

東山区を走る
祇園を走る

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