シリーズ環境問題を考える 167  PDF

暑い夏の一日観察記録
「地球温暖化防止には植物の力を借りよう」

 今年の夏は暑くて、長かった。7月の平均気温は日本の観測史上、2・16度高く、過去最高を記録した。京都市でも今年は9月20日時点で、35度を超える猛暑日が54回となった。「夏バテ」は普通に聞く言葉だが、今年は「残暑バテ」が出現した。地球温暖化のせいで異常気象が発生していることが実感される。地球温暖化の原因で主役を占めるのが、産業革命以来大気中に徐々に蓄積してきた温室効果ガス・二酸化炭素(CO2)である。
 したがって夏休みの小学生の観察記録よろしく、この夏の一日、家の玄関先でCO2濃度を測ってみた。測定器は中国製のポータブルCO2測定器AZ7755(写真)で、京都市西京区川島の住宅地の一角・玄関先に5分間静置の上測定した。5時に474ppmであったCO2濃度は太陽が昇ると徐々に下がり始め、10時頃から21時頃までが417〜411ppmと日本の平均値419・3ppmより低く、最低は16時の397ppmであった。当日の最高気温は38・3度、7月28日の日の出は5時03分、日の入りは19時03分であった。CO2濃度は日の出とともに低下し、日没後は徐々に上昇し、夜中(測定していないが)から早朝は高くなる。人間活動が盛んで、また化石燃料によるCO2排出の多い日中にCO2濃度が低下するのは、海洋や昼間に盛んに光合成活動をする植物のCO2吸収量が排出量を上回っているからと推測される。
 環境省によると大気中のCO2濃度は、2023年の12カ月平均で419・3
ppmと、前年比で2・8ppm上昇した。いまや産業革命以前の水準に比べて50%以上高い値となっている。C
O2排出の半分は海洋と草地・森林の陸域生態系に吸収されるが、海洋によるCO2や大気の熱の吸収は海洋酸性化を通じて、海洋生態系に大きな影響を与える。植物の葉は、昼間には太陽の光を利用して光合成を行いCO2を吸収する一方、植物の葉・枝・幹・根は一日中呼吸を行いCO2を排出している。しかし光合成によるCO2の吸収は呼吸や有機物分解によるCO2の排出より多く、その差し引き分は有機物として蓄えられる。
 2022年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は、10億8500万トン(CO2換算)で、森林等からの吸収量は5020万トン(環境省による。ただし1億7800万トンとの説もある)であった。国土の3分の2が森林である日本はCO2吸収能力を維持・向上させるためには森林の保全管理、植林が重要であるとともに、街路樹、公園、草地、農業を含めた陸域生態系を守り育てていかねばならない。今回の一日CO2濃度観察で、日中のCO2濃度低下は植物の光合成による吸収が大きな役割を果たしていると思われ、日常目に触れる陸・水の植物を大切にすることは省エネ、脱炭素、再生可能エネルギーの拡大とともに地球温暖化を防ぐ大事な柱である。植物の光合成は夏に盛んだが、冬に乏しいとされている。次は冬の一日のCO2濃度の観察記録を試みたい。
(環境対策委員 山本 昭郎)

夏のある1日のCO2濃度の変遷 7月28日(日曜日)晴れ時々曇り 最高気温38.3℃

5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 4:30
CO2(ppm)
474 463 445 420 421 417 416 405 403 405 398 397 401 404 408 406 411 454

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