乗り鉄ドクの趣楽悠遊 vol.25(最終回)村上 匡孝(綴喜)  PDF

銀河のちサンライズ(JR西日本) 国鉄の残り香を乗り継いだ一日
 広島の酒都、西条で酒蔵巡りを楽しんだある日のこと。山陽本線普通電車で東に帰る途中の尾道駅に青い列車が止まっていました。慌てて降りてみれば、WEST EXPRESS銀河。聞けば空席ありとのことで早速乗り込みました(写真1)。若い頃に見た京阪神を結ぶ“新快速”電車。かつては奈良線や湖西線も走っていた117系電車を改造した、美しい海や空を表現する瑠璃紺色の車両です。ロゴマークは西日本の魅力を星に見立ててその星々の間を列車が移動する様をデザインしたとか。BOX席のファーストシート、リクライニングシートやのびのび座席クシェット、ファミリーキャビンにプレミア個室があり、寝台車はありませんが、座席は簡易ベッドにもなり、好きな区間、好きな時間の鉄旅をチョイスできます。4号車「遊星」はくつろぎのフリースペースとなっています。夕暮れの車窓と旅愁で心地よく眠っていると早や10時過ぎ。終着の大阪駅に到着しました。環状線で一駅の福島の高架下の飲み屋で時間調整をして、大阪駅発0時33分の東京行きサンライズ瀬戸・出雲号に乗りました。ほろ酔いで大阪駅まで歩く深夜の散歩が気持ち良い。
 深夜の大阪駅11番ホームは哀愁漂う独特の趣。夜のとばりの中をサンライズの長い編成が入ってきます(写真2)。夜汽車の旅情に浸りたいのですが、停車時間は短い(写真3)。個室に入ってすぐ眠りに落ちました。翌朝は海が見える根府川駅(神奈川県)通過の前に早起きします。この駅の周辺では海の向こうに朝日が昇る美景を見ることができます。冬の日曜日はこの海近駅にトランスイート四季島(JR東日本)が日の出鑑賞のために止まり、シャンパンゴールドの車体と夜明けの暁光とが彩ります。ラウンジでくつろいでいるうちに(写真4)終着の東京駅に到着。動めく人たちが集散する朝の巨大駅なのに、着いた東海道線ホームはエアーポケットのような長閑な時空。ゆっくりと列車が入線する終着駅風情とのギャップがシュールです。八重洲地下街でコーヒーを飲みます。
 今回の推し地酒。亀齢萬年純米吟醸原酒五拾(亀齢酒造、西条、広島)
 (WEST EXPRESS 銀河、サンライズ瀬戸2022年7月乗車)

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