DXの波 その対応法 税務編 税理士 岡田 俊明 調査権限強化になりかねない「電子保存」 2  PDF

税務調査との
関係
 「ダウンロードの求め」とは質問検査権のうちの「提示・提出要求」の読み替えです。ダウンロードは「当該電磁的記録を複製した写しとしての電磁的記録を提出すること」と定義づけられています。提出要求について「その求めを受けた保存義務者が求められた一部分しかそのダウンロードに応じない(一部でも応じない)ような場合は、『国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示または提出の要求に応じることができるようにしている場合』には、該当しない」とも言います。その場合は「各税法に基づく帳簿書類の保存がなかったこととなる」と説明します。
 税務調査は調査官の質問と帳簿書類の検査により行われます。検査は帳簿等の提示や提出があって初めて可能になります。つまり、電子保存の義務化は面倒な保存を緩和する代わりに調査への新たな受忍義務を課すようなもので、大変危険な制度変更、調査権限の強化になりかねません。
調査強化を狙う
 この「ダウンロードの求め」は、 売上5千万円以下の小規模事業者は検索要件不要 新たな猶予制度で紙への出力保存を可能―とする制度改正がされており、この場合に要求されることになります。
 つまり、以下のような状況を想定しています。
 帳簿書類のデータ保存を行っている対象帳簿書類(データ)について、税務調査の際に調査官からのダウンロードの求めに応じることができるようにしておくことを求めています。この求めに応じることにより、税務署サイドではデータの検索や訂正・削除・追加の有無等の確認が可能になり、データ改ざんの有無をチェックできるというわけです。
 この求めに応じなかった場合や不十分な状態でデータが提供された場合には、そのデータは帳簿書類として扱わないとまで言うのですから怖い話です。調査権限を定めた国税通則法の改正がないまま、電子帳簿保存法施行規則(財務省令)で事実上の調査権限を拡大するような手法は認めがたいものです。

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