遠隔医療・オンライン診療の政策背景を解説  PDF

消化器診療内容向上会レポート

 消化器診療内容向上会を京都消化器医会と協会の共催で、メルパルク京都において12月1日に開催。参加者は49人となった。開会にあたり京都消化器医会から粉川隆文会長、協会から鈴木卓副理事長があいさつした。

 この会は京都消化器医会が隔月で行っている総合画像診断症例検討会において、年1回程度、京都府保険医協会との合同で開催している勉強会です。
 まず特別講演として「遠隔医療・オンライン診療の実装状況と今後の展望~平成30年度診療報酬改定から読み解く~」というテーマで、千葉大学病院、病院経営管理学研究センター特任講師、吉村健佑氏より講演いただきました。
 講演では、2018年度診療報酬改定によるさまざまな政策的な追い風のもと、遠隔医療・オンライン診療に関連した対応が幅広くなされたこと。一方でさまざまな留意事項があり、各医療機関の導入に際しては制度の理解が不可欠であることを説明いただきました。さらに、これらの算定要件の詳細な解説と、各医療機関に求められる遠隔医療・オンライン診療への対応と、背景となる政策的な動向を具体的に紹介していただきました。
 吉村健佑氏は07年千葉大学医学部医学科を卒業され、15年4月厚生労働省に入省、医系技官として保険局と医政局を兼任。医療ビッグデータとしてのレセプト情報等データベース(NDB)のシステム更改と機能増強・利用規制の緩和、NDBオープンデータの仕様検討と作成・公開、医療情報連携ネットワークを介した診療情報共有に対する診療報酬の設計、遠隔診療のエビデンス構築に資する研究班の立ち上げ、診療ガイドラインを活用したEBMの普及推進など、医療情報に関連した政策立案と制度設計に関わってこられました。17年からは厚生労働省と国立保健医療科学院を併任して主に医療経済分析の領域にて政策研究を実施。18年3月に厚生労働省を退官され、同年4月より医療機関の持続可能性をテーマに千葉大学医学部附属病院にて産業医業務および病院経営・管理学についての教育研究を行い、同時に千葉県庁健康福祉部医療整備課にて県内の医師確保対策に取り組まれておられます。このような経歴を持たれている氏ならではの内容や視点が多く、普段の臨床の勉強会では聞くことのできない非常に興味深い講演内容でした。
 休憩をはさんで、京都大学消化器内科学講座の菊池志乃氏より、過敏性腸症候群の臨床研究について内容説明があり、研究協力を依頼するパンフレットが配布されました。
 後半の検討会では、このたび行政主導で開始された胃がん内視鏡検診の理解を深める目的で、京都消化器医会会員より3人の医師に登壇いただき、各々の胃内視鏡の基本撮影方法を具体的にスライド提示により説明していただきました。十倉佳史胃腸内科クリニックの十倉佳史氏と粉川内科医院の粉川隆文氏には経口挿入による撮影方法を、京都第二赤十字病院の小林正夫氏には経鼻挿入による撮影方法を発表していただき、それぞれの手法による違いやコツを述べていただきました。その後のディスカッションでは、京都府医師会消化器がん検診委員会委員長の前川高天氏(京都医療センター)も交え、参加者からの質問も多く熱気にあふれた検討会となりました。
 いつもは症例検討を行うセッションですが、新しく導入された胃がん内視鏡検診のために今回はこのようなスタイルが採用されました。胃がん内視鏡検診はまだまだ問題点が多くあり、今後もこのような勉強会を通じて理解を深めることにより、受診者と医療機関の両者が安心して検診事業に参加できる体制を整えていくことが大切であると感じられました。
 最後に、特別講演の演者選定から会場準備など、京都府保険医協会の事務局の皆様には大変ご尽力いただいたことをこの場を借りて深謝いたします。
(京都消化器医会副会長・大塚弘友)

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