植田 良樹(伏見)
アイキャンプで、10年ほど前までに何度か、ネパールにいきました。かつてのネパールは大変な医療僻地で、栄養も悪く進行した白内障のため失明状態のお年寄りも多かったのです。
日本でむかし外来で処置につかったような顕微鏡を分解し、車の入れない山の上までシェルパが運びます。学校の教室を借り、ビニールで天井を内張りし、患者さんは硬い机に寝かされて、点滴管の水流だけで水晶体皮質を除去します。顕微鏡だけは電気が要りまして、しょっちゅう停電するので非常にやりにくい。非常用の小型発電機の起動を待ちきれず、周囲から懐中電灯で照らしてもらって手術を続行したこともありました。
アイキャンプは正月前後の乾季に行われ、この時期は水力発電による電力供給がおちるのでした。太陽光パネルはあっても、お天気次第。
首都カトマンドゥでも、電力事情はかわらず。唯一の都会で電力消費が大きく、一日のうち8時間停電というのはざらで、もうじき12時間停電になるとか、果ては16時間とか、電気が来てる方が短い。金の回る集客施設だけは自家発電で明るく、電気を食わないLEDが宿の廊下を照らしていました。
社会が高度化するほどに、安定した大量の電源供給はインフラとして必須です。いわゆる環境エネルギーはその条件をいまだ満たしていません。中国は今後200基の原発を新設を予定するといいます。インフラ維持は、国の生命線なのです。日本では多くの原発がいまだにとまりっぱなしで、金を食いながら、ただ、急速に劣化しつつあります。
東北の事故でも直接の死者は出さず、OECDによっても石炭火力よりよほど環境リスクの低い原発を、止めっぱなしにして、産業の運営に支障をきたして、稼げる金がなくなれば、福祉も保険医療も成立しません。少数派の大きい声のやたらめだつネット社会で、国全体が我慢大会しているようで、私はとても心配です。