2018年5月から、全国のハローワークで、雇用保険手続きについて、マイナンバー(個人番号)不記載の書類を返戻する旨のリーフレットが配布されている。手続き書類が返戻され、申請の支給時期が遅れることになれば、加入者に不利益が生じることになる。協会は、マイナンバーの不記載を理由として雇用保険手続の書類を返戻せず、速やかに受理するよう5月18日付で京都労働局、府内各ハローワークに要請書を提出した。
制度開始2年余り 問題多いマイナンバー
事業者に送付される「住民税の特別徴収額決定通知書(以下、通知書)」に2017年5月から従業員のマイナンバーが記載され、誤送付等による情報漏えいが京都府を含め、全国で相次いだ。マイナンバー記載は、従業員の自己情報コントロール権侵害、事業所の管理業務負担、事業所や自治体の情報漏えいリスク等問題が山積しているため、協会は府内自治体に不記載を要望してきた。
こうした中、2017年12月の与党税制改正大綱で、「書面により送付する場合には、当面、マイナンバーの記載を行わないこととする」と明記され、府内の全自治体は、2018年5月からの書面での通知書のマイナンバー不記載を決定した。
マイナンバー制度は2016年1月から開始されたが、会員からは個人として、また事業者としての対応方法の問い合わせが協会に多く寄せられ、法令では個人に提供義務を負わせる規定はなく、事業者にも協力するよう努力義務を規定するにとどまる旨を会員に周知してきた。ここであらためてマイナンバー制度の問題点を整理する。
真の狙いとは
マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用され、行政の効率化、国民の利便性の向上、さらに公平・公正な社会の実現を目指すとして導入された。しかし、マイナンバー法施行前の法改正で、預金口座や医療分野の一部(予防接種と特定健診)への利用も決定された。さらに国は、身分証明等としての利用、行政サービスの利用(健康保険証、印鑑登録証、図書館カード、戸籍情報との連携等)、民間サービスにおける利用(診察券・クレジットカード等多機能化の推進、医療保険のオンライン資格確認の導入等)を掲げ、利用範囲拡大を計画している。国は、行政効率化や国民の利便性を名目に、マイナンバーを「成長戦略の一環としての企業の個人情報利活用」と「個人情報を紐付け・一元管理し、国民の収入・財産や個人そのものの国家管理」を最終目的と位置付けていると考えられる。
医療機関の負担大きいマイナンバー
さらに、マイナンバーの利用拡大は、情報漏えいの危険性を高める。どのようなセキュリティ対策も万能なものはない。万一マイナンバーが漏えいしても、最小限の被害にとどまるように利用範囲は限定するべきだ。マイナンバーは特定個人情報と位置付けられ、取扱い・漏えいに関して事業者に厳しい罰則が設けられている。医療機関を含む事業者は、事業規模の大小に関わらず、マイナンバーの取得、保管、廃棄までの管理を一方的に押しつけられている。行政の効率化のため民間事業者に経済的にも厳しい管理体制を押しつけながら、さまざまな分野で将来的に利活用を進めることは矛盾しており、行政が全面的に責任を持つべきである。
協会は、今後も政策動向を注視し、マイナンバーが社会保障の給付抑制や民間利用の拡大につながらないように声を上げ続けていく。会員各位には、ご意見をお寄せいただき、協会活動にご協力願いたい。