新年度にあたって 今、問われている医師のあり方 次代の医療提供を見据えて議論を  PDF

理事長 垣田 さち子

 2025年問題に繋がると、緊張感を持って迎えた今年度の医療・介護同時改定であったが、細かな要件を満たした上でのみ認められる“加算”方式が多く導入され、診療報酬のあり方が大きく変わった。同じ地域で同じ内容の診療を受けても、医療機関によって診療報酬が異なり、当然窓口負担が違ってくる。保険医運動の大事な命題である「一物二価を許さない」という約束が崩されつつある。
 背景には、在宅医療に熱心に取り組んでいる医療機関を評価し、高報酬を設定して政策誘導を行う狙いが見て取れる。在宅療養支援診療所・病院として往診を中心に医療提供を行うところだけでなく、一般診療所にも在宅への参入を促す意図が見え見えである。
 今回「かかりつけ医」機能強化加算が新設され、算定するところでは初診料が3割近い大幅アップになる。評価はこれからだが、先日の当会代議員アンケートでは賛否は分かれ、実際に届け出た診療所は多くない。
 加算要件の一つである支援診・支援病では、診療実績(在宅看取り数など)の1月ごとの確認作業(強加算のみ)、基本となる在宅時医学総合管理料に加えて、訪問看護・リハ・栄養食事等の指導料、さらに介護保険との連携(居宅療養管理指導料等)、時には介護職員への喀痰吸引等指示料…。複数の医療機関の訪問診療が認められたのは良かったが、これらの連携が進めば進む程、それに費やされる労力は多大なものとなる。地域の人々に医療を提供し貢献したいと願う医師達が、例えば昨今の請求システムの複雑化、難解化に嫌気がさして「もう止めたい」と呟く声を聞くたびに、何がおかしいのか、どこで間違えたのかと考える。
 保険証一枚を持って行けば、いつでもどこでも誰でも必要な医療を受けられるという日本の皆保険制度は、医師も医療提供側として中から支え努力を重ね、世界がうらやむ優れたものに作り上げたと誇りにしてきたのだが、その前提として、全国どこでも公平公正な医療提供体制が実現されていなければ、絵に描いた餅になってしまう。
 京都府は全国一、二の対人口比医師数の多いところだが、その多くは京都市内に集中し、北部・南部の医師不足は深刻である。また、市内でも地域によっては、年齢別人口構成、各科の実際などを勘案すると医師の需給度は決して充分ではない。医師の偏在をどうするか。医師の働き方改革も政治課題になっている。次代の医療提供の根幹である医師のあり方を、しっかり議論していきたい。

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