門 祐輔(綾部)
59歳で自己記録を大きく更新! トップスピードは確実に落ちているにもかかわらず、こんな体験ができるのがウルトラマラソンの醍醐味かもしれない。
残暑厳しい9月に行われ、アップダウンの激しさで有名な「丹後100kmウルトラマラソン」へ初めて参加したのは40歳代。とりわけ60km地点から始まる碇高原への登りやラスト20kmリアス式海岸は地獄そのもの。美しさを味わう余裕もなく、12時間半かかり這々の体でゴールした。
2回目は50歳代半ば。40
km過ぎからこむら返りで苦しめられ、やけくそで給水所の塩を舐めていたら摩訶不思議、こむら返りがなくなった。文献検索すると、マラソンで低ナトリウム血症はよく起こるとのこと(汗が大量に出るので汗腺の塩分再吸収が追いつかず塩分不足。給水多量で水中毒状態へ)。熱中症治療に塩は欠かせないのを体感した。
その年の冬からジョギング通勤を始めた。往復6kmなので楽に月間100kmを超える走行距離へ。多少走っても疲れず、筋肉の質が変わったことを実感した。翌年は一気に1時間くらい記録を更新し11時間半。その後は一進一退だったが、ついに一昨年は11時間3分へ。比較的涼しかったからか、5月の鯖街道マラソン76km、6月の飛騨高山100kmマラソンのレガシー効果か、早い先頭集団に煽られて前半ハイペースになったのが結果的に良かったのか、単なるまぐれか…。11時間切りを目指したくなった昨年は、途中で食べ過ぎ50km過ぎで嘔吐するハプニング。しかししんどい坂はゆっくり歩くなど我慢を重ねているうちに回復し、終わってみれば自己記録より6分遅いだけだった。その都度やれることをやっているうちに活路が開ける、(ウルトラ)マラソンは人生そのものだと実感した。
マラソンは、日頃の地道な積み重ねが成果につながるという点で、地域での医療や介護連携に似ている。地域包括ケア時代。綾部・中丹の医療や介護も、関係者の努力でずいぶん連携が進んだと実感する。綾部での単身赴任生活を始めて4年近くになるが、都市部との違いがとても面白い。
昼間でもうっそうと木々が生い茂る道を走るのは楽しい。とはいえ綾部でも熊が出没する時代、最近はイノシシと併走する道を走るのは自粛している。
一生に一回だけと臨んだ昨年5月の「萩往環250km」は、台風並みの雨と風のため124km地点でリタイア。しかし68%の参加者が完走したとの報道に、思わず今年も申し込んでしまった…。自己責任にて倫理問題にはならない人体実験を楽しんでいるが…家族の視線はいつも冷ややか。健康にいい…はずがない。