自由詩コーナー/谷口 謙 選
微小貝の夏
m.
轟く雷鳴
激しい雨
海は荒れ狂い
灰色の波が打ち寄せる
そういうところに
微小貝はいる
試練を承知の上で
月のないよる
門林岩雄
みちゆくひとの
ちいさなあかりで あればよい
よみちはくらく ながいから
二十二年八月十九日
友に
友よ
谷川で傷口洗い
また歩き出そう
日のくれるまで
立秋
木陰でやすむ
木の葉がからかう
秋にたつ日
秋の田
きらきらと
羽光らせて
精霊トンボ
かろやかに舞う
漆黒
加藤善郎
ただ真直ぐに歩いていた
怖(こわ)くてふり返れない漆黒
埋没されてゆく深い虚無
あのよきの空は一面の灰色
叫(さけ)んでいるムンクの口元
でもあれは叫びだろうか
やはり虚無の綻(ほころ)んだ口元…
私はそれすらも出来ない
漆黒もいずれうすらぐだろう
でも 今は怖くて叫べない
「確かに気象は異常で、今までのデータが教えてくれる範囲での防災では間に合わないようだ。予測がつくものであれば、避難場所も安全な所に設置されただろうにと思う。雨の降り方が変った。いつまでも降り止まない雨。それにゲリラ豪雨と呼ばれる雨。狭い地域に、バケツをひっくり返したような雨が降る。雷が加われば、天と地が割れるのではないかという気持ちになるような様相だ。そう、地が割れたのだ。(『深層崩壊』山沖素子)
お知らせ 「文芸欄」(読者のひっち俳句・自由詩コーナー)は、12月掲載をもって終了いたします。自由詩の最後の応募締切は11月25日ですので、ぜひご応募下さい。