続 記者の視点(46)  PDF

続 記者の視点(46)

日本の未来を危うくする大学生の「四苦」

読売新聞大阪本社編集委員 原 昌平
 いまどきの大学生はろくに勉強もせず、バイトで稼いで遊び回っている——そんなイメージを抱いている人がけっこういるのではないか。
 その認識は、間違っていると言いたい。全体として見ると最近の大学生は、まじめでおとなしい。授業にも出る。
 そういう学生と親たちを圧迫する「四苦」は、学費、奨学金、バイト、就活である。
 学費はとにかく高い。国立大でも25年前の1980年度に入学料8万円、授業料18万円だったのが、今は入学料28万円台、授業料53万円台だ。
 一部に裕福な家庭の子はいるものの、親の平均年収は90年代後半から減少傾向が続いている。老後に備えた蓄えを取り崩したりして学費を出すだけでも大変で、小遣いや仕送りの額は減っている。
 このため、教科書代、通学費、生活費は自分で何とかするしかない学生が大勢いる。手段は奨学金かバイトだ。
 日本学生支援機構の奨学金を利用する学生は5割を超すが、この奨学金は給付ではなく、貸し付け。しかも大部分は金融機関などの資金を元にした有利子貸し付けで、本人が借りる教育ローンのようなものだ。教師になると返還免除される制度も97年度入学を最後になくなった。奨学金を借りた学生は、卒業時に何百万円もの借金を抱える。
 だから、しっかりした所へ就職しないと破綻する。少し改善したとはいえ、就活の競争は厳しく、失敗すると、名の通った大学を出ても非正規やブラック企業で働くことになりかねないから、必死だ。
 就活の時期はバイトができず、交通費やスーツ代もかかる。就職に有利な資格を取るには、また費用がかかる。
 そんな事情もあって、遊びや旅行の費用以前に、生活費を調達するためにバイトをする学生が増えてきた。
 そのバイトがまた問題だ。店の都合で勤務予定を入れられる、試験前でも休めないなど、学業に支障の出る長時間労働が珍しくない。不払い残業、罰金天引き、過大なノルマ、商品の自腹買い取り、パワハラなども多い。「ブラックバイト」である。それでもバイトを辞めると生活に困るから、簡単に辞められない。
 お金が大変なら大学に行かなくても、などと言える時代ではない。昔と違って高卒の就職先は限られる。
 能力があっても経済的理由で進学できない、勉学が十分できない、中退せざるをえない、大学院へ進めないといった状況が再び生じつつある。
 学生がかわいそう、親御さんも大変だね、と言って済む話でない。高等教育を受ける学生・院生は、社会の将来を担う中核なのである。
 OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本はGDP(国内総生産)に占める教育への公的支出の割合が最下位であり、とくに高等教育への公的支出が少ない。大学進学率も低いほうだ。
 この国が経済と社会をそれなりに維持していくカギは、技術、アイデア、品質、デザイン、知的財産などを生む人材である。高等教育、研究開発にしっかりと投資しないようでは、先行きが心配だ。

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