私の趣味 懐かしの周遊券  PDF

私の趣味 懐かしの周遊券

戎井 浩二(山科)
 
 ペタペタと下車印だらけの周遊券(写真)、これらは昭和61年春、国試後に東北と北海道に約2週間、一人旅した時のものです。これ以外にも学生時代は周遊券で各地を旅行しました。
 貧乏学生にとって周遊券は強い味方でした。時々これを引っ張り出し、眺めていると何となく幸福な気分に浸れます。あの頃は時間だけはたっぷりありました。
 私の場合、旅といってもただひたすら列車に乗っては降り、駅弁とその駅の硬券入場券を買い、駅の周辺をぶらぶら散策、観光地巡りするわけでもありませんが、目に入るもの全て珍しく、ちょっと見聞が広がった気分でした。
 ケータイのない時代、一度旅に出てしまえば心細くも自由です。小さなラジカセとお気に入りのカセット、カメラ、時刻表、そして数着の着替えだけ。古くて冷房もない車両、固いシート、身をかがめて寝た夜行列車、紫煙漂う車内、列車行き違いの長い待ち合わせ、旅は不便で危険なのが当たり前、それでもなぜかわくわくしていました。
 当時はまだ国鉄時代、サービスなんか二の次、愛想もへったくれもありませんでしたが、職員さんに話しかけると親切に応えてくれたものです。鉄道全体にまだまだ「職人気質」が色濃く感じられた時代でした。でも、子どもたちにこういう思い出を話すと、かなり呆れられます(苦笑)。まぁ、理解してもらうつもりもありませんが。
 近年、周遊券という制度自体はなくなりましたが、まだいろいろなフリー切符が発売されています。皆様もたまにはぶらりと旅に出られてはいかがでしょうか? 私も時間を作りたいのですが、なかなか…。
 追記:11月6日、レイルウェイ・ライターの種村直樹さんが逝去されたとのこと。この方の著書には多大な影響を受け、わざわざ会いにも行きました。合掌。

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