私の趣味 心躍るミステリー小説
梶田洋一郎(中京東部)
趣味は、と言うほど特別なものではありませんが、私はアガサ・クリスティの小説が大好きです。最初の出会いは小学3年生の頃、「そして誰もいなくなった」という作品を映画化したものでした。その劇的なストーリー(後述)に衝撃を受け、お小遣いをもらって駅前の小さな書店に買い求めにいったのを覚えています。
クリスティは1976年に没するまで、66作品の長編小説を残しています。基本的に推理小説なので殺人事件の解決というテーマは共通しているのですが、作品ごとに探偵役が異なり、得意とする解決パターンも異なるのが魅力です。ベルギー人のエルキュール・ポアロは灰色の脳細胞を用いて犯人を追いつめ、おばあさんのミス・マープルはおしゃべりの中から殺人の動機を見出し、トミーとタペンスは無鉄砲な冒険をしながらドイツ人のスパイを捕まえます。その他、いわゆる探偵役が登場しないミステリーも数多く、読んでいて実に飽きません。中でもお気に入りの「NかMか」「終わりなき夜に生まれつく」「なぜエバンスに頼まなかったのか」などは、いまだに風呂につかりながら繰り返し読んでおり、文庫本はまだらに変色しています。
しかし、代表作は何と言っても「そして誰もいなくなった」でしょう。食卓にある10個のインディアン人形が一つずつ紛失する度、マザーグースの童謡どおりに登場人物が姿を消していくという内容ですが、原題は「Ten Little Indians」であることはご存知でしょうか? 日本で作品が広く知られるようになったのは、この邦題が寄与するところが大きいのではと思います。私が思うに、クリスティの作品は、words to wordsにとどまらない「クリスティ愛に溢れた和訳」によって肉付けされ、さらに輝きを増しているのです。
原本を読んで和訳と比べようと思いながらまだ1冊も読めていません。趣味は何ですか、と聞かれた時に少し箔をつけて「クリスティの原本読破です」と言えればちょっと格好いいですかね。