療養病棟における他医療機関受診の必要性及び入院料の減額規定に係る緊急アンケート調査結果  PDF

療養病棟における他医療機関受診の必要性及び入院料の減額規定に係る緊急アンケート調査結果

療養病棟でも他医受診は必要、減算規定は撤廃を!

 2010年4月診療報酬改定で、入院中の患者の他医療機関受診の取扱いについて、規制が強化された。外来受診した場合であっても原則投薬は入院側で行うとされ、1日分しか外来側で投薬できない、外来側での診療内容が入院料に包括されていない場合でも入院料を30%減算する、などの取扱いである。実際の運用が始まり、この問題が顕在化。国会でも取り上げられ、中央社会保険医療協議会(中医協)では、当該問題に関する議論が、改めて開始されるに至った。出来高入院料算定病棟に入院中の患者が外来受診した際の投薬の取扱いについては、運用通知が変更され、従前通りの投薬が可能となったが、療養病棟等包括病棟入院患者の場合の外来受診時の投薬制限や、入院料の減額規定については、何ら解決していない。そこで協会は、包括病棟の大部分を占める療養病棟での実状、実態を把握するために、緊急のアンケート調査を実施した。

 対象は、京都府内で療養病棟を持つ会員病院(72医療機関)。アンケートは6月8日付で送付。6月25日までに37医療機関より回答があった(回収率51%)。

1、回答医療機関の形態

 回答を寄せたのは、療養病棟のみの病院が10医療機関(27%)、療養病棟と一般病棟とのケアミックスの病院が24医療機関(65%)、療養病棟と一般病棟以外とのケアミックスの病院が3医療機関(8%)であった。

2、「療養病棟」入院中の患者の他医受診の必要性

 「療養病棟」に入院中の患者について、専門外等の理由による他医療機関受診が必要なケースがあるかどうかを尋ねた。

 「よくある」と回答したのは7医療機関(19%)、「ある」と回答したのは18医療機関(49%)、「多くはないがある」と回答したのは9医療機関(24%)。実に9割超の医療機関で、他医療機関受診が必要なケースに遭遇していることがわかった(図1)

図1

 一方「ない」と回答した医療機関は3医療機関(8%)にとどまった。

 療養病棟単独の病院と一般病棟とのケアミックスを行っている病院を比較したところ、療養病棟単独では、他医療機関受診の必要なケースが「ない」と回答したところは皆無となった(図2)。一般病棟とのケアミックス病院では、療養病棟単独の病院よりも自院で担える医療の幅が増すと考えられ、回答に若干の違いがあるものの、その傾向に大きな違いは認められなかった。ケアミックスであっても9割超の病院が、他医療機関受診の必要性を訴えているところが注目される(図3)

図2

図3

3、入院料30%減算規定について

 次に、療養病棟等包括点数を算定する病棟の患者が、他医療機関を外来受診した場合、外来側で行った診療行為が、入院料に包括されている項目でなくとも、その日の入院料が30%減算されることについて、考え方を尋ねた(複数回答)。

 最も多かったのは「診療行為が重複していないのになぜ減算されるのかわからない」で、33医療機関が回答した。「30%減算とされている数字の根拠がわからない」が17医療機関であった。医療内容が重複していないにも関わらず、30%もの減算を強いられている根拠は「ない」と感じていることがわかる(図4)

図4

 一方で、入院料30%減算が妥当であると回答した医療機関は皆無であった。

 なお、その他の回答は「減算幅の大きさもさることながら、相手レセプトを取り寄せて添付せよ等、運用面も煩雑、かつ非現実的」というものであった。

4、入院料70%減算について

 最後に、外来側で行われた診療行為が、入院料に包括されている場合、入院料の70%が減算されるが、実際に外来側で行われる診療行為の額は、入院料の70%に相当する額なのかどうかを尋ねた。

 外来側での診療行為が「入院料の70%に達しないことが多く、70%は減算し過ぎ」と回答したのが31医療機関、84%を占めた。「70%程度が多く、70%減算は妥当」との回答が1医療機関(3%)あったが、「70%を上回ることが多く、70%減算は少なくて助かる」との回答は皆無であった(図5)

図5

 「70%減算」が、いかに実態以上の減算となっているかがわかった。

 〈結果〉一般病棟よりも比較的安定した状態の患者が入院していると考えられる療養病棟であっても、入院中に他医療機関受診が必要なケースがあること。療養病棟等包括病棟に入院中の患者がやむをえず他医療機関を外来受診した際の入院料減算規定について、30%減算の場合は根拠が不明なこと。70%減算の場合はその額が実態に応じていないこと―が明らかとなった。

根拠なき減算規定の即時撤廃を

 療養病棟を持つ医療機関は、診療科も多く地域の中核を担う病院というよりはむしろ、地域の入院医療を底辺で支える存在である場合が多い。それ故、専門外等の理由により他医療機関受診が必要となるケースがあることが十分想定されるが、今回のアンケートにより、そのことが裏付けられた。出来高入院料算定病棟入院患者だけでなく、療養病棟等包括病棟入院患者であっても他医療機関での投薬制限等を設けるべきではない。

 また、入院料の減算規定についても撤廃されるべきである。70%の減算規定は、10年4月の診療報酬改定以前から存在したが、他医療機関受診時に外来側医療機関に支払われる診療費の額と大きくかけ離れている実態が明らかとなった。減算規定そのものが撤廃されるべきではあるが、少なくとも70%という減算額は早急に見直されるべきである。さらに、10年4月の診療報酬改定に至る中医協での議論を振り返っても、重複した医療行為が皆無である場合の減算規定を30%としたことについては、なんら明確な根拠は示されていない。アンケート結果からも、なぜ30%減算されるのか、現場はまったく理解できていないことが明らかとなった。根拠なき規定は即刻廃止されるべきである。

 政府、厚労省が、本アンケートの結果を真摯に受け止め、地域の医療連携を阻害し、混乱させている、入院中の他医療機関受診取扱いについて、問題点を解決できるよう早急に動き出すことを期待したい。

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