原発推進・容認派の皆様方へ  PDF

原発推進・容認派の皆様方へ

 原子力発電所の寿命は、少々無理をしてもたかだか50年程度といわれています。でもこの短い稼働期間中に、莫大な無害化処理のできない、使用済み核燃料(高レベル放射性廃物―少なくとも数万年の御守が必要)が発生します。更に廃炉後には高度に汚染された原子炉本体と、膨大な周辺機材が残されます。

 その巨大な商用原子炉本体の廃炉処理方法は、未だ研究開発段階であり、使用済み核燃料の多くは、今も原子炉建屋内のプールで冷却保存されているのです。建屋内核燃料プールの危険性は、非稼働中にかかわらず起きてしまった福島第一原発4号機の爆発・惨状により、ようやく一般市民にも知られるようになりました。

 大半の原発において行われている、このような危険な保存は量的飽和状態にも近づきつつあり、六ケ所村再処理施設の巨大プールもあまり先はないようです(物理科学的には危険なリラッキング=保管密度の増強、で延命を図っている施設もあるといいます)。

 今のところ(間違いなく将来も)核燃料サイクルが実用化される見込みはありません! 使用済核燃料の最終処理はおろか、除染作業の結果発生している膨大な量の低レベル放射性廃棄物すら、処理の目途は立っていません(処理どころか中間保管施設も白紙状態)。これらバックエンド問題を先送りにした原発の再稼働や新設など、私には正気の沙汰とは思えないのです。

 しかーし! 先日の総選挙で示された様に、日本国民の多くは遥か子々孫々に亘り関わる環境問題よりも、現在の生活に重要な経済問題を選択しました。一時あれほど盛り上がった(に思われた?)原発問題=環境問題は、結局票には反映しませんでした。福島事故をきっかけに脱原発を決定した国家も複数あるというのに…。国民性の違いでしょうか。はたまた長年行われた原子力安全教育の成果なのでしょうか?

 現与党はエネルギーのベストミックスと称する、脱・脱原発を唱えており、新首相は原発新設にすら意欲を示し始めたと伝えられます。危惧の声は挙がり続けるでしょうが、少なくとも今後は、済し崩し的に再稼働を行おうとするのは明白でしょう。また事故前には原発依存目標を50%としていたにかかわらず、今回の選挙では脱原発を表明し、惨敗した前与党にもあきれました。また十分な説明無しに選挙目的のみで、声高に即時廃炉を訴えた勢力にも疑問符が付きます。

 残念ながら原子力行政については、現在の政治に期待できないのは明らかです。でもこれが国民の多数意見ならば、法治国家の住民として抗う術はありません。せめて政治家の方々には、現実的な経済原理での脱原発志向を望みます。最悪でも核燃料サイクルの夢だけでも諦めていただきたいものです(数十兆円もの無駄遣いになりそうです)。

 たとえ今後、原発が稼働することがなくとも、除染や廃炉、再処理目的などの原子力関連産業は存在し続けることでしょう。少々の経済発展に寄与する可能性があったとしても、対価としてはあまりに高すぎるツケを払わされる可能性は否定できないのです。

(西京・武田信英)

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