医療安全対策の常識と工夫(27)
紛争解決のポイントです!「医師賠償責任保険」制度の理解
医事紛争に遭遇された医療機関の中には、患者さんに対して「保険に入っているから何とかします」と、気安く仰る方が未だにおられるようです。患者さんにしてみれば、「何とかする」とは即ち「医療過誤を認めて賠償して貰う」ことを意味します。調査の結果、賠償責任までは問えず保険金が下りない事態となった場合には、当然ながら双方にとって困ったことになる訳です。
一部の医療機関では「医師賠償責任保険」を、交通事故の賠償責任保険と同じものと捉えられている様子が窺えます。即ち、事故が発生すれば被害者に(ほぼ自動的に)相当額が支払われ、かつ示談交渉も保険会社もしくは京都府保険医協会がすると思っておられるようです。
繰り返しお話ししているように、医師賠償責任保険の場合、「医療事故」ではなく「医療過誤」の存在が保険金を支払う条件となります。また、交通事故は例外的に保険会社による示談交渉が認められていますが、それ以外の事故では医療事故を含め、例え保険に入っていても弁護士以外は、代理人として相手側と交渉することはできません。医事紛争の当事者は、あくまでも患者さんと医療機関であることをご理解下さい。もちろん、協会としてもできるだけの協力を惜しみません。そのために「医師賠償責任保険処理室会」を毎月定例で開催しています。ここでは単に保険の問題だけではなく、紛争の原因も究明しています。
重要なことは、ひとたび医事紛争に遭遇したら、協会と協力をして解決に当たる姿勢で、その姿勢こそが医療機関の患者さんに対する「誠意」となり得るのではないでしょうか。
次回は、医療従事者の日常と患者の非日常についてお話します。