医療安全対策の常識と工夫(19)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(19)

似て非なるもの「医事紛争」「医療事故」「医療過誤」

 トラブルが起こった際に、患者さんの話を聞いていると、最初のうちは何を問題としているのか、分からない場面に出くわすことがあります。医療行為の結果が得られない、あるいは予想に反して悪かったことは確かに事実としてあるのですが、よくよく聞いてみると「説明が足らなかった、態度が悪かった等々」とのこと。さらに確認をすると「医者にミスがあったかどうかなんて、素人の患者に分かるはずがない。でもこんな結果になったんやから医療過誤や!」と矛盾した主張をされます。

 一方、医療機関側も患者さんの勢いに負けて、その言い分をあたかも全面的に認めたような態度や発言をされる場合も見受けられます。

 この時点で「医事紛争」になっているものの、必ずしも「医療事故」「医療過誤」とは限らないと思われます。この三者を混同しないことは、患者さんへの対応はもちろんのこと、紛争予防にも必要なことなのです。

 「医事紛争」の解決には、一般に最初の対応が肝心とされています。ボタンの掛け違いが起これば、いたずらに解決を長引かせることにもなりかねません。また、賠償問題にもこの三者の区分は大きく影響を与えます。金銭問題とは別次元の「医事紛争」が、結果的には金銭問題にまで発展してしまうケースの多くは、この三者を患者さん側も、医療機関側も混同してしまっていることから始まっているようです。

 次回は具体的に、「医事紛争」「医療事故」「医療過誤」の違いについてお話します。

ページの先頭へ